時間栄養学

2022年06月10日 08:55

「食べる時間でこんなに変わる 時間栄養学入門」(BLUE BACKS)は柴田重信博士によって執筆された本です。薬学博士の柴田博士は、早稲田大学先進理工学研究科電気・情報生命専攻薬理学研究室教授であるとともに、日本時間栄養学会会長を務めています。ここでざっと体内時計(概日リズム・サーカディアン・リズム)と時計遺伝子について説明したいと思います。体内時計とは、約25時間周期で変動する生理現象で、動物、植物、藻類、などほとんどの生物に存在している(ある種の単細胞生物も持っているらしい)。厳密な意味では、概日リズムは内在的に形成されるものであるが、光や温度、食事など外界からの刺激によって修正される。視交叉上核の体内時計を主時計、大脳皮質や海馬など、視交叉上核以外の脳にある体内時計を脳時計、末梢の肝臓や肺や腎臓など、臓器にある体内時計を抹消時計と呼んでいる。また時計遺伝子とは、概日リズムを司る遺伝子群を指す。動物ではperiod(per)、 Clock (Clk)、cryptochrome(cry)などが知られている。ちなみにショウジョウバエの研究からperiod(per遺伝子)の発見・同定したことにより、ジェフリー・ホール、マイケル・ロスバッシュ、マイケル・ヤング3氏に2017年ノーベル生理・医学賞が贈られています。この本はこうした時計遺伝子の仕組みから同じものを食べても、同じ運動をしても、時間帯によって体に及ぼす変化が違ってくることを解説してくれます。食物繊維を撮るタイミングで、血糖値や腸内細菌はどう変わるか?運動効果は朝と夕で変わるのか?体内時計は老化するのか?などだいぶ解明が進んできている様です。ただ論文紹介調の文章は若干読みづらく、人間のデーターとマウスのデーターがバラバラに登場するので読むのに多少コツがいる様です。まだまだ発展途上な分野だと思いますが、今後、将来的にはAIを活用した健康管理のシステムに応用するなど、健康寿命の延伸に関わってくるのではないでしょうか。さらなる研究によってより解明が進むことを期待しています。

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