52ヘルツのクジラたち

2021年07月22日 17:09

毎年、本屋大賞にノミネートされている本の中からだいたい1〜2冊読んでいます 2021年本屋大賞については発掘部門の「ない仕事の作り方」みうらじゅん著について以前ブログに書きましたが、ノミネート作を読むのがだいぶ後回しになってしまいました。今回は2021年本屋大賞1位(獲得した得点はダントツだったといっていいと思います)「52ヘルツのクジラたち」町田そのこ著を読みました。あくまでも小説なのでお話の世界のことなのですが、どこかで現実に暮らしている人たちの物語なのかもしれないと感じさせる作品でした。主人公の貴瑚、アンさん、美晴、藤江さん、村中のおばあちゃんなどの登場人物のカッコ書き“「」”で書かれているセリフにそれぞれのキャラクターが本当に語っているようなリアリティーというか説得力のようなものを感じます。そこはあえてそうしている作者の意図なのかもしれませんが、ちょっと欲を言うならば、登場人物がはっきり良い人と悪い人に分かれているような気がするので、もう少し多様な登場人物像があっても良かったのかもしれないと思いました。聞き取れない声を聞いている誰かが、ひょっとしてどこかにいるかもしれない。本当は聞き取れない声は、自分だけが聞き取れないと思いこんでしまっているのかもしれない。そう思わせてくれる小説です。

ちなみに52ヘルツのクジラはWikipediaによると、正体不明の種の鯨の個体であり、非常に珍しい52ヘルツの周波数で鳴く鯨です。ウッズホール海洋研究所のチームにより1989年に初めて聴取され、毎年8月〜12月のいずれかに太平洋において同定される。北はアリューシャン列島、南はカリフォルニア沿岸まで、1日30〜70キロメートルの速度で遊泳しています。どんな生物学的は原因があるにせよ、その稀な高周波の声がこの鯨の生存の妨げになっているわけではないようであり、その呼び声に類するものは他になく、その源はたった一人である。それゆえに、この個体は“世界で最も孤独な鯨”と呼ばれているそうです。

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