空気の研究

2021年05月14日 08:58

「空気」の研究は1977年に単行本として刊行され、のち文庫化したものを2018年に新装版とした本です。著者の山本七平さんは、1921年(ちょうど100年前に生まれた方で、1991年に亡くなられています)に東京に生まれ大学卒業と同時に陸軍に召集されて、米軍上陸間近い比島へ送られて、地獄の比島戦を経験し、九死に一生を得て1947年に帰国しています。こうした体験から多くのことを汲み取って、それは戦史の証言であると同時に、日本人論としてこの「空気」の研究にも生かされていて、戦中戦前の思想様式や行動様式が今も変わらず、日本において「空気」はある種の絶対権力を握っているのだと指摘しています。第二次世界大戦開戦における「空気」や個々の作戦を縛る「空気」などから、著者はあとがきで“何かを追求するといった根気のいる持続的・分析的な作業は、空気の熟成で推進・持続・完成できず、空気に支配されず、それから独立し得てはじめて可能なはずである。従って、本当に持続的・分析的追求を行おうとすれば、空気に拘束されたり、空気の決定に左右されたりすることは障害になるだけである。持続的・分析的追求は、その対象が何であれ、それを自己の通常性に組み込み、追求自体を自己の通常性に化することによって、はじめて拘束を脱して自由発想の確保・持続が可能になる”と述べています。また日下公人さんの解説文を読むと、著者の指摘から40年。現代の我々は、ますます「場の空気を読む」ことに汲々とし、誰でもないのに誰よりも強いこの妖怪を「忖度」して生きている、と指摘しています。
自分は根気強く「空気」に左右されず物事を考え、判断しているだろうか?考えさせられました。
まだまだ理解仕切れないところがあると思うので、山本七平さんの「私の中の日本軍」や「常識の研究」など他著書も読んでみて、もう一度と読み直してみたいと思います。

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