「資本主義と自由 The Road to Freedom Economics and the Good Socity」ジョセフ・E・スティグリッツ博士著を読みました。著者のジョセフ・E・スティグリッツ博士はノーベル経済学賞を受賞した経済学者。「スティグリッツPROGRESSIVE CAPITALISM」、「世界の99%を貧困にする経済」、「フリーフォール グローバル経済はどこまで落ちるのか」などのベストセラーを執筆。クリントン政権時代の大統領
経済諮問委員会の委員長、世界銀行チーフエコノミストを務めた経験があり、2011年にはタイム誌の「世界で最も影響力のある100人」に選ばれた。現在はコロンビア大学で教鞭をとるかたわら、ルーズヴェルト研究所のチーフエコノミストを務めている。(表紙裏著者紹介より)
この本では、新自由主義が掲げてきた「政府からの自由」という考え方を批判し、自由とは“実際に選択し行動できる能力“であり、そのためには教育・医療・環境などの基盤が不可欠だと再定義する本である。博士は、40年続いた市場任せの政策が格差を広げ、社会的流動生を低下させ、人々の自由をむしろ奪ってきたと指摘する。
中心的な論点は、自由は相互依存的であり、一人の自由が他者の自由を侵害することがあるため、適切な規制や公共投資が必要になるという点である。環境汚染や金融リスクなどの外部性は市場では処理できず、民主的に合意された制度こそが自由の総量を増やすと博士は述べています。
そのうえで、独占規制、金融の健全化、教育・医療への投資、公正な税制、環境政策、そして強い民主主義制度を柱とする協働的で進歩的な資本主義モデルを提案し、形式的な「政府からの自由」ではなく、実質的に行動できる自由を拡大する道筋を示している。
ミルトン・フリードマン博士が1970年9月13日のニューヨークタイムズ紙に寄稿した論説「The Social Responsibility of Business is to Increase Its Profits」は、企業の社会的責任をめぐる議論の“原点“となった文章であり、企業の唯一の責任は株主の利益を最大化することである、と強く主張したものです。この論説は、後の新自由主義や株主価値最大化モデルの思想的基盤となったものです。
スティグリッツ博士が1976年ジャーナル・オブ・ファイナンスに投稿した論文「The Theory of Screening,Education,and the Distribution of Income」は、情報の非対称性とスクリーニング理論の基礎を築いた歴史的論文で、後の新自由主義批判や市場観の転換に直結しています。この理論は、企業が合理的に利益最大化を行っても、情報が不完全なために市場が最適な資源配分を達成できない事を示し、厚生経済学の基本定理(市場均衡は効率的)を現実世界では適用できないという強力な含意を持っています。さらに、教育がシグナルとして機能することで、所得配分が必ずしも生産性に基づかず、社会的不平等が市場メカニズムによって再生産されることも明らかにしています。
1970年に登場した新自由主義へ、1976年には反証が登場していた・・・。新自由主義への幻想ってなんだったんでしょうね?考えてみれば非効率の国営企業を民営化したり、日本のバブル崩壊やリーマンショックなどの問題を解決したのは“市場“ではなく“政治“的な決断だったのですよね。
ジョン・ロールズ博士は「正義論」の中で、社会の制度や正義を考えるときに“自分の立場をいったん忘れる“という思考実験を提唱しています。自分がどんな立場になるかわからない状態で社会のルールを選ぶなら、人は必ず“誰にとっても公平な制度“を選ぶはずだ・・・・・よく考えてみたいと思います。