「フェイク」中野信子著を読みました。著者の中野信子博士は東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程修了。医学博士であり脳科学者、認知科学者です。フランス国立研究所ニューロスピンに博士研究員として勤務後、帰国して脳や心理学をテーマに研究や執筆の活動を精力的に行う。「ヒトは“いじめ“をやめられない」「キレる!」「空気を読む脳」など著書多数。テレビコメンテーターとしても多く出演されています。
内容はこんな感じです、フェイクニュース、振り込め詐欺・・・日常生活において、ウソやニセにまつわる事件やエピソードは数知れず。騙されてしまうメカニズム、そしてフェイクと賢く付き合いながら生き抜く知恵まで、脳科学的観点から分析、考察します。
どちらかというと、中野博士は、「ウソは悪」とするのではなく、人は完全無欠の正直な生き物ではなく、フェイクは人の歴史と共にあり、日々の会話、行動、思考、目にするもの、耳に入るもの全ての中にフェイクが含まれていて、人はフェイクと共に生きていかなくてはならない、つまりウソとうまく付き合っていかなければならないという文脈で書いています。もちろん、あらゆるウソを許容すべきだと言っておられるわけではありません。第7章から一部抜粋すると「何が本当で、何がウソなのかを明らかにする。そして真実を伝えることが正しく、ウソをつくことが悪であると思考停止させられてしまうのではなく、それらがもたらすものが何なのか、その影響についても、引いた目線で冷静に考えることが重要であると思うのです」と書かれています。
理屈としてはこうした考え方を理解することはできるのですが、感情的にはなかなか整理して納得するのは難しい。最近はAIを使って作成したサイトやメールで巧妙に騙す手口が出てきたり、そもそも何がウソで何が本当かわからない非常に巧妙で利己的なフェイクニュースなども登場し、こうした事例は自分では本当かウソか判断できない場合、しばらく“どっちかわからないよね“と判断を保留して、頭の端っこに置いておくしかありません。人間て判断保留でのらりくらりと日常生活がスムーズにいけば良いのですが、これがなかなか難しい。生きるので精一杯で余裕がなくなったと言って仕舞えばそれまでですが、ウソと付き合っていくのは精神力も必要な様です・・・・じっくり考えてみたいと思います。