「北緯43度のコールドケース」伏尾美紀著を読みました。この作品は第67回江戸川乱歩賞を受賞しています。内容はこんな感じです、博士号を持ちながら30歳で北海道警察の警察官となった沢村依理子。ある日、5年前に未解決となっていた誘拐事件の被害者、島村陽菜の遺体が発見される。犯人と思われた男はすでに死亡・・・・まさか共犯者が・・・・・？捜査本部が設置されるのも、再び未解決のまま解散。しばらくのち、5年前の誘拐事件の捜査資料が漏洩する。なんと沢村は漏洩犯としての疑いをかけられることに。果たして沢村の運命は、そして一連の事件の真相とは。
江戸川乱歩賞の選考委員が「登場人物が魅力的」「警察の描写がリアル」などのコメントをしていますが、警察の描写は、著者の伏尾美紀さんは元警察官なんじゃないかと思うくらいリアルでした。警察内部の組織のこととか、犯罪捜査の方法など専門的なところはどうしても解説調になってしまいがちですが、文章の字の文が三人称（名前で“沢村は“とか“滝本は“などのようになっている部分）で書かれている部分と主人公が一人称（主人公が語り手となる）で語るところを違和感ないようにミックスしていて、うまくその辺りの説明が頭に入りやすいように処理されている様に感じます。
女性が主人公の警察官を描いた小説は珍しいのではないでしょうか。スーパーウーマン的だったり、トラウマを抱えたやさぐれた主人公かと思いきや、心に傷を負った普通の人で一般の人と変わらない悩みや日常があったりします。題名をなぜ「北緯43度のコールドケース」にしたのかが謎ですが（札幌だから？）、複雑に絡み合った事件の謎解きも面白いですし、現代の社会問題も織り込まれています。ぜひ読んでみてください。