もうかなり前のことで曖昧になっているところもあるけれど、とある不思議な体験をし、その出来事があったことである“色”に魅せられてしまった話をしようと思う。僕は当時、横浜の薬局に勤めていてJRの駅からいつもバスに乗って通勤していた。その薬局は海から近く、バスは海に向かって流れていく川沿いを走る路線だった。こうしたバスの路線は日本中に何百とあるだろうし、特に何か変わったところのない普通のバス路線だったと思う。薬局での勤務を終えた土曜日の帰り道、多分時間は4時ごろだったと思うのだが、何しろ10年以上前のことなので記憶が曖昧になっている。僕はいつものように最後尾の座席に座って、ぼんやりと外の景色を眺めていた。すると1羽のカモメが僕のちょうど目線の高さにやってきて、見事にバスの速度に合わせて並走して飛んでいた。その時僕は、あまりのカモメの白い色の美しさに魅了されて、しばらく目が離せなかった。誰かにこのことを話すと信じてもらえないことが多いのだが、その時僕はカモメと目があったと思っていて、優雅に飛んでいるそのカモメはバスの中の人間を見て、そんな狭いところに押し込まれて大変だね君はと言っているようだった。カモメが本当は何を考えていたかは、カモメに聞かなければわからないし、そのかもめに2度と会うチャンスはないだろうけれども。後から冷静に考えてみると短い間あったかもしれないが、窓を隔てているものの50cmくらいの距離でカモメを穴の開くほど観察した。後日誰かにこのことを説明するときに僕はいつも、時間にしてどれくらいかはいえないが、だいたいバス停一つ分くらいと説明することにしている。
以上、村上春樹風に以前体験した不思議体験を書いてみたのですがいかがでしょうか?
本当にあった出来事です、信じてもらえないかもしれませんが・・・。それ以来カモメの“白”が好きになり、“白”の中で一番綺麗な“白”はカモメ色(カモメ色があるとは思いませんが)の“白”だと思っています。
写真は江ノ島界隈をナワバリにしているカモメです。いつもだいたい10羽くらいいて、同じ電灯に3羽ぐらいかたまっているのですが、写真を撮った日は1羽だけでした残念。