間合い

2022年07月29日 09:00

「間があいた」「間に合う」「間をおく」「間違い」「間が悪い」「間が持てない」など「間」に関する言葉は沢山あります、日常的に「間」を意識せずに生活することは難しいのではないかと思います。そこで今回読んでみた本は、「知の生態学の冒険 J・J・ギブソンの継承 全9巻の② “間合い“」です。著者の河野哲也博士は立教大学文学部教育学科教授、専門は哲学、倫理学、教育哲学。NPO法人「こども哲学・おとな哲学アーダコーダ」副代表理事をされています。

この知の生態学シリーズ(他に③「自己と他者」⑥「メディアとしての身体」⑨「アフォーダンス」などがある)はJ・J・ギブソン博士によって創始された生態心理学・生態学的アプローチにおける重要なアイデアや概念ーアフォーダンス、生態学的情報、直接知覚論、知覚システム、視覚性運動制御、知覚行為循環、探索的活動と遂行的活動などを受け継いだ、さまざまな分野の日本の研究者が、自身の分野の最先端の研究を一種の「エコロジー」として捉え直し、それを「知の生態学」というスローガンのもとで世に問おうとするものです。(このJ・J・ギブソン博士は心理学者で、知覚研究を専門とし、認知心理学とは一線を画した直接知覚説を展開。アフォーダンスの概念を提唱して生態心理学の領域を切り開いた方です)

知の生態学シリーズ②「間合い」では、「間」は、日本の文化にとっていまだに強い生命力を持ち続けている。私たちは、文化的な現象としての間にしばしば注意を払い、間の取り方を丁寧に扱い、間がどうあるべきかについて気を遣っている。とりわけ、日本の伝統的な技芸の世界、すなわち、芸術や芸能、武道の分野で、間は重要な役割を担っている。間と間合いという現象とそれを創出する人間の身体性について、生態学的現象学から記述し、考察することを目的としています。

かなり難しい本で、生態心理学とは何か?というポイントを押さえないとなかなか理解することは難しく感じましたが、それでも多少はわかる部分もあって、のちに能や狂言として発展していく猿楽の猿楽師・世阿弥の「せぬ隙」や「離見の見」などはなるほどなあと思ますし、日本庭園とアラビアの庭園・フランスの整形庭園を比較して、日本庭園は、時間的であり、過程的であり、トポロジカルであるのに対して、フランスの成形庭園は、無時間的、静態的、遠近法的であると考察されている所などは面白いなあと感じました。

事前に生態心理学の本を読んでおくとより分かり易かったかもしれません、「間」に興味のある方は是非読んでみてください。

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