「第二次世界大戦前史」という本を読みました。この本は1960年に出版されていますが、元々は1942年「最近世界外交史」の第四編として刊行されたものをに第六章を加え、若干の補筆を加えて改訂したものです。序文は1941年10月に書かれていますので、その2ヶ月後に太平洋戦争が開始されることになります。著者の芦田均さんは1912年東京帝国大学卒業後、外務省に入り外交官となる。最初の勤務地ロシアではロシア革命(1917年)に接し、1918年に赴任したフランスではパリ講和会議(1919年第一次世界大戦における連合国が同盟国の講和条件等について検討した会議)を目にしている。1925年にはトルコ、1930年からはベルギーに赴任し、1932年に退官すると政界へ転身した。立憲政友会に所属して外務省とのパイプ役を務め、軍国主義が広まる議会においてリベラリストとして活動し、戦後は自由党の結成に関与した後、離党して民主党を結成し、主犯として首相(第47代内閣総理大臣)を務めました。(Wikipedia調べ)
本の内容は、著者の外交官の経歴がヨーロッパで積まれていることから、だいたい1930年ごろから1939年の1930年代のヨーロッパ史となっています。考えてみると第二次世界大戦は日本中心に歴史を見ることが多く、なぜ太平洋戦争になぜ至ったのか、どこで道を誤ったのか、避けることはできなかったのかといった視点で見ることが多く、その間ヨーロッパでどのようなことが起こっていたのかをあまり考えてこなかった様な気がします。この本では、あくまでも日本の元外交官という視点で書かれてはいますが、非常に客観的な視点で書かれており、各国新聞の各紙によるプロパガンダや世論の動向の分析、各国首脳の演説の変遷、重要なポイントで行われる各国間の会議や条約締結の裏を読むなど、教科書にしても良いくらい勉強になりました。なぜヒトラーは勢力を伸ばすことができたのか?、エチオピアとイタリアの関係、スペイン革命の影響、チェコスロバキアの崩壊、ポーランド侵攻、平沼首相談話「欧州の天地は複雑怪奇なる新情勢を生じ・・・」で有名な独ソ不可侵条約が結ばれた経緯など、歴史に興味ある方はぜひ読んでみてください。期待を裏切らないと思います。この本の続編で第二次世界大戦外交史という続編が出ているのですが、こちらは終戦記念日前後にブログに書きたいと思っています。
ちなみにこの本は60年前の本ですが(ハードカバーの立派な装丁がされている本です)、図書館で借りてみて非常に良い状態できれいに保存されていることにちょっと感動しました。こういった一級品の資料が無料で読めるのですから、図書館の重要性は今後も変わらないのだろうと感じました。