至誠の日本インテリジェンス

2022年05月27日 08:41

「至誠のインテリジェンス」は第二次世界大戦における旧陸軍の三人の軍人、小野寺信少将、樋口季一郎中将、藤原岩市中佐のインテリジェンスの面から見た歴史を描いた本です。著者の岡部伸さんは産経新聞入社後、社会部記者として警視庁や国税庁などを担当し、アメリカのデューク大学とコロンビア大学東アジア研究所に留学。外信部を経て、本社編集局編集委員、ロンドン支局長を経て現在は産経新聞論説委員をされています。この本の中でも多くのページを割いている小野寺少将については「私の明治・大正・昭和」という小野寺百合子さん(小野寺少将の奥様)が書いた本も併せて読みました。ここで小野寺少将について少し説明したいと思います。1928年陸軍大学を卒業後、ロシアの専門家として道を歩み始め、1935年ラトビア公使付き武官、1936年にはエストニア・リトアニア公使付き武官を兼務となる(1938年にはリトアニアの在カナウス日本領事館領事代理に杉原千畝さんが着任している)。参謀本部ロシア課を経て、1940年11月にスウェーデン公使付き武官となり、1941年12月太平洋戦争を迎える。情報士官として海外から送った機密情報はソ連が参戦するヤルタ密約情報などをはじめ非常に質の高いものだったそうです。また太平洋戦争開戦前夜スウェーデンから「日米開戦絶対不可ナリ」と開戦を反対する電報を30通以上打電しています。欧州客観情勢判断するのに、回線は断固するべからず。ドイツに頼ることは危険。と非常に俯瞰した的確な分析をおこなっています。もちろん諜報活動には、謀略や破壊工作などの綺麗事では済まない部分もありますが、小野寺少将は「情報活動で最も重要な要素の一つは、誠実な人間関係で結ばれた仲間と助力者」だと語っていたそうです。奥様の書いた本も併せて読むとなるほどなあ・・・とより理解が深まります(駐在武官の妻という立場も大変なのだと感じました)。軍備という文脈だけでなく、広く日本の安全と国益を守るということを考えれば、インテリジェンスの強化は必要な気がします。小野寺少将であれば、現在の世界情勢をどのように分析するのだろうか・・・考えてみたいと思います。

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