「危機の外交 岡本行夫自伝」の著者である元外交官・岡本行夫さんは藤沢市出身(一時鎌倉にも住んでいたことがあるそうです)で内閣総理大臣補佐官、内閣参与、内閣総理大臣外交顧問などの政府要職も数多く歴任され、その他にも外交評論家、実業家、教育者(多くの大学で後進を指導)などで活躍されていましたが、2020年4月24日新型コロナウイルス感染症のため亡くなられました(享年74歳)。この本は岡本さんが長年ライフワークとして日・米での出版を目指していた自叙伝の日本語版です。もともと『アメリカの学生たちが日本研究をする際の副読本になるような本を英語で書きたい。正しい日米同盟、日米関係を理解してもらいたい。その中には、日本が湾岸戦争でどれだけ貢献をしたかを詳細に記し、日本へのアメリカの不当な扱いを彼らに知ってもらいたい。そういった本を書くのが目標で、これは俺のライフワークだ。』というような目的を持って英語版を書き進めるうちに、いろいろな新しい情報は日本の読者にも伝えておくべきだと思い、岡本さんは同時に英語版と日本語版を書き進めていたそうです。いろいろな方の努力もあったのだと思いますが、日本語版は2022年4月15日に発行されました。
岡本行夫という人物像として、ご両親の生い立ちから始まって、北米一課長としての、湾岸戦争当時の働き。橋本龍太郎内閣において、内閣総理大臣補佐官として沖縄基地問題解決のための働き。小泉純一郎内閣において、内閣総理大臣補佐官としてイラク復興支援のための働きなど、当事者だけが知る真実なども明らかにされています。特に日本語版は、岡本さんが安全保障に長く携わってきた観点から、日米同盟の重要性を解き、日本の安全保障の歪みに対する真剣な認識の必要性を解き、長期的な国家戦略を構築し、そのための体制作りを行うべきであるという文脈からなっていると思います。前文の刊行に寄せてでは、北岡伸一(国際協力機構 理事長)さんがこう述べています「第二次世界大戦後西側が享受してきた平和と繁栄は、根本的に脅かされている。自国は自国で守り、かつ自由主義諸国で守り合うことが、今ほど必要な時はない。これまで真正面から安全保障に向き合ってこなかった日本にとって、課題はとくに大きく、重い。日本を守るための真剣な努力と、国際社会の安定のために責任を果たすことが、ともに不可欠である。そういう時にこそ、岡本さんの声に、われわれはもう一度耳を傾けるべきだろう。」
2022年5月6日現在、岡本さんがいたら国際情勢をどのように分析されるのでしょうか?考えてみたいと思います。