赤い闇 スターリンの冷たい大地で

2022年03月25日 19:07

「赤い闇 スターリンの冷たい大地で」アグニシュカ・ホランド監督は2019年のポーランド・ウクライナ・イギリスの伝記映画です。Rotten Tomatoesによれば、批評家の一致した見解は「欠陥はあるが根源的に価値のあるこの作品は、困ったことに今日的な意味を持ち続けている、事実に基づいた物語を綴るために過去をじっくり調べている」であり、86件の論評のうち高評価は84%にあたる72件で、平均して10点満点中6.83点を得ている。ストーリーは、1933年ヒトラーに取材した経験を持つ若き英国人記者ガレス・ジョーンズには、大いなる疑問があった。世界恐慌の風が吹き荒れるなか、なぜしターリンが統治するソビエト連邦だけが繁栄しているのか。その謎を解くために単身モスクワを訪れたジョーンズは、外国人記者を監視する当局の目をかいくぐり、全ての答えが隠されているウクライナ行きの汽車へ乗り込む。やがて凍てつくウクライナの地を踏んだジョーンズが目の当たりにしたのは、想像を絶する悪夢のような光景だった・・・・。

この映画で取り上げられているのは、1932年から1933年にかけてウクライナ人が住んでいた各地域で起きた人工的な大飢饉です。ソ連における第一次五カ年計画において、コルホーズ(集団農場)による農業の集団化、クラーク(富農)撲滅運動、また反国家分子をグラグなどの強制収容所に収容したり、さらに穀物の強制挑発などを原因として発生したとされています。当時の報道で、飢饉による被害は世界でもある程度知られており、ニキータ・フルシチョフ第一書記は「私が正確な数字を提示できないのは、誰も計算し続けていなかったからだ。われわれが知っていたのは、無数の人々が死につつあるということだけであった」とのちに回想していることから、歴史学者が示している様に、犠牲者は数百万単位だったのではないかと考えられています。

ソ連は、あらゆる手段を用いて、飢饉を作り話だと否定し、ソ連に同情的な世界中の知識人を利用して飢饉の隠蔽工作をおこなっていたと言われています。それを映画の中では、ニューヨーク・タイムズモスクワ支局長のウォルター・デュランティは大義だと言うのですが、主人公のガレス・ジョーンズは真実を追求します。いつの時代も為政者は情報を操ろうとするものなのかもしれませんが、現代の世界中が繋がっているインターネット、SNSの世の中ではどうなのだろうか・・・・・・・・・・・考えさせられました。

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