Invent&Wander

2022年03月18日 08:50

「Invent&Wander」はAmazon.comの共同創業者、取締役会長であるジェフ・ベゾスさん自らの言葉による初めての本です。この本は1997年以来彼が自ら綴ってきた株主への年次書簡やインタビュー・講演の原稿によって構成されていて、Amazonの成功を生んだ考え方・ロジック・原則といった思考法が見えてきます。ジェフ・ベゾスさんはプリンストン大学で電気工学とコンピューターサイエンスで学位を取得した後、金融業界で働き新興のヘッジファンドでシニア・バイス・プレジデントになったのですが、そのキャリアを捨てて、ご存知の通り1994年1月Amazonを起業して、驚異的な成功を収め2020年の時点で資産が2000億ドルを超えている世界最大級の資産家です。これほどの世の中に影響力を持っている有名人でも、人物像は謎に包まれているところがあり、ネットで調べるとそのイメージは冷酷な経営者、倹約家、楽観的なCEO、オタク、安売りをする傲慢な人物、世界最悪な上司など様々で、いまいち一貫性がない様なよくわからないところがあります。しかしこの本を読んでいくと、いろいろな側面を持ちながらも、抜粋したくなる内容や言葉が数多く盛り込まれていて、ジェフ・ベゾスさんの人物像がわかる内容となっています。「競争相手よりもお客様にこだわること、熱を込めて新しいことに取り組み、道を切り開くこと、失敗を厭わないこと、辛抱強く長期に目を向けること、そしてプロとしての誇りを持って優れた業務運営を行うこと」といった組織文化をもつところなどは松下幸之助や本田宗一郎などの日本の経営者とも通じるところもある様に感じます(優秀な経営者は世界共通の視点を持っているのかもしれませんが)。一方で、優秀な社員を流出させてしまうのは簡単だ。例えば、意思決定のスピードを遅くすればいい。物事が進まない組織には留まりたくないはずだ(反対してもコミットする原則は意思決定のスピードを早める)。などはアメリカの起業家らしい発言なのではないでしょうか。ちなみに株主への手紙では、株主に対しての説明責任の重さや、苦労が垣間見られて、アメリカでの株主に対するプレッシャーは、日本では想像できないほど大変なのだろうなあと想像してしまいました。

自らが卒業したプリンストン大学での卒業生に向けたスピーチで、祖父とのエピソードを引用し、「賢いよりも優しいほうが難しい」賢さ=才能で優しさ=選択であり、あなたの選択があなたという人間をつくる。と語りフィランソロピストとして活動している、個人としてのベゾスさんの心の中が少し見えた様な気がします。ぜひ読んでみてください。

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