差別はたいてい悪意のない人がする

2021年11月19日 08:47

「差別はたいてい悪意のない人がする」という本を読みました。著者のキム・ジヘさんは江陵原州大学校多文化学科教授であり、移民、セクシュアル・マイノリティ、子供・若者、ホームレスなど様々な差別問題に関心を持ち、当事者へのリサーチや政策提言に携わっています。この本は16万部を超えるベストセラーになっているそうです。この本の原タイトルは巻末の解説を書かれている、大東文化大学准教授のキム・ミジンさんによると「善良な差別主義者」となっているのですが、邦題と原タイトルともにやや攻撃的というか刺激的な印象があり、本の内容からするとちょっと攻めすぎ感は否めないように思います。編集者からすれば、これくらい鋭さがないと“本を手に取ってもらえない”ということなのかもしれません。

しかし書かれている内容は刺激的な言葉が並んでいるわけではなく、丁寧に書かれています。プロローグから抜粋すると「差別はつねに、差別によって不利益をこうむる側の話であって、差別のおかげでメリットを得る側の人が、みずから立ち上がって差別を語ることはあまりない。差別は明らかに両者の非対称性によって生じるものであり、全ての人にとって不当なことであるにもかかわらず、不思議なことに、差別を受ける側だけの問題のようにあつかわれる。いったいこれはどうしたことだろう」こうした疑問から、個別の例を挙げて丹念にリサーチをして、私たちがみずからを善良な市民であり、差別などしない人だと思い込んでしまっている事実を解説してくれます。

エピローグには「みんなが少しずつ緊張をほどき、少しゆるんではいても、馴染みのない存在をも包み込むことができる、余裕のある関係をつくってみようと提案したかった。」と書かれています。人生を通じて常に多数派(マジョリティ)の側に位置する人はいないのではないかと思います、必ず少数派(マイノリティ)の側に立つことがあるはずです。差別される側になる可能性は常にある、むしろ確率的に言えばそう考える方が自然であり。そう考えれば差別の問題は、誰もが考え、常にアップデートしていかなければならない。私自身もこの本で少しアップデートできたのではないかと思っています。・・・・・・・おすすめの1冊です。

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