「キネマの神様」原田マハ著を読みました。いい歳したおっさんが部屋で小説を読みながら泣いている姿は(若干気持ち悪いと思われるかもせれませんが、申し訳ありません事実です)、ちょっと他人には見せられないくらい泣きながら読んでました。感動した!というのとは少し違っているような気なします。「はじめてのおつかい」というテレビ番組があります、その番組は、お父さんやお母さんに言われて、小さい子が健気に頑張って生まれてはじめてお使いに行くところを隠しカメラで追っていくのですが、それを見ていると何かを乗り越えようと、純粋に、一心に、ひたむきに取り組む様というのでしょうか、その純粋さに心を動かされるようなところがあって、このテレビ番組も見ていると泣いてしまいます。今回の「キネマの神様」も純粋に映画が好きな人たちがたくさん登場して、ひたむきに映画にまつわる問題に取り組む様、そこに心を動かされたのではないかと思っています。今まで映画を見ると、作り手や出演者などの話題に注目してしまう傾向があったのですが、映画を見る側の、映画ファンに焦点を当てた作品もいいなあと感じました(映画は残念ながらまだ見ていません)。原作の原田マハさんはフリーのキュレーターなので美術の専門家です。もちろん小説家でもあるので小説も書いているのですが、当然と言えば当然ですが、美術を題材としている作品が多いそうです。Wikipediaで調べた内容では映画との接点はそれほど多くないようですが、片桐はいりさんが書いている文春文庫の解説に、原田マハさんは池袋文芸坐でモギリのバイトをしていたと明かされていたので納得がいきました。原田マハさんも映画が純粋に大好きな映画ファンなのだと思います。
ちなみに小説の中に登場するリチャード・キャバネルの元になっている人物はニューヨーク・タイムズで1969年から1990年代まで専属の映画評論家として勤めていたヴィンセント・キャンビーだと思われますが、彼が日本映画で絶賛していた作品には小津安二郎の「彼岸花」があるそうです。(まだ見ていませんでした、今度見たいと思います)
やっぱり小説っていいなあと思わせてくれるような作品です、特に映画ファンにはおすすめです。