「中国の歴史認識はどう作られたのか」を読みました。著者のワン・ジョン博士はアメリカのシートンホール大学ジョン・C・ホワイトヘッド外交国際関係大学院准教授で全米米中関係委員会委員などとして米中関係、東アジアの国際関係などを幅広く研究している方です。原題は「NEVER FORGET NATIONAL HUMILIATION Historical Memory in Chinese Politics and Foreign Relations」となっていて原題の方が本の内容に沿っているようですが、日本人には邦題「中国の歴史認識はどう作られたか」の方がわかりやすくなっていて、上手い邦題だなあと感心してしまいました。なぜ中国の若者にこれほどまで愛国主義が根付いているのか?なぜ天安門事件以降、中国共産党政権は国民の支持を回復したのか?。「歴史」ではなく「歴史的記憶」しかも集合的な記憶という掴み所のないものが、国民的なアイデンティティの形成にどのような役割を果たしているかを、中国の公文書、スピーチ、インタビュー、歴史教科書、歌などの幅広い資料から多面的に分析しています。“なるほど”とか“そういうわけだったのか”とか中国を考える上で、今まで謎だったものがスッキリするようなところがあります。日本人としても、東アジア初の各国共同執筆による歴史教科書の非政府プロジェクトや、中間層のリーダーシップが大事であるとした取り組みが、今後の和解を目指す上で大切であることなど参考にすべき内容になっていました。中国で育ちアメリカで研究を続けているという多面的で幅広い視野を持ち、膨大な資料の中から1つ1つピースを拾い集めて分析を組み立てる根気強さを併せ持っている博士だからこそ完成した、とってもためになる本だと思います。何かいい本ないかなあと探している方がいたら、最近のおすすめの本の中でも、ぜひ読んでもらいたい1冊です