ディア・ハンター

2021年07月03日 08:53

「ディア・ハンター」は何度も見直している映画の一つで、もう何回観たかは思い出せません。1978年のアメリカ映画で第51回アカデミー賞作品賞を受賞、マイケル・チミノ監督は監督賞を受賞しています。ペンシルベニア州ピッツバーグ郊外にある街、クレイトンの鉄工場で働くロシア系移民。休日に鹿狩りに行く平凡な仲間たちの彼らにもベトナム戦争の影が迫り、徴兵によって仲間のうちの3人がベトナムに向かうことになります。街に残る者、ベトナムに向かう者、それぞれの人生はバラバラになっていくのですが、ニック(クリストファー・ウォーケン)との「おれに何があってもこの街に連れ帰ってくれ、ここが全てなんだ」と言う約束を守ってバラバラになった人生を元の街に返そうと手を尽くすマイケル(ロバート・デニーロ)。観てない方は是非観てください、おすすめの1本です。確か最初に観たのは中学生の頃だったと思いますが、その時は単にベトナム戦争の映画だなあくらいにしか思わなかったのですが、映画の批評を読んだり、友人から聞いてベトナム戦争当時の時代背景やロシア系移民の暮らすクレアトンと言う街の状況などを知っていくにつれて、何度も見返しているうちにじわじわ好きになっていった映画です。

You’re just too to be true
Can’t take my eyes off of you
You’d be like heaven to touch
I wanna hold you so much
At long last love has arrived
And I thank God I’m alive
You’re just too good to be true
Can’t take my eyes off of you

1967年フランキー・ヴァリ「Can’t Take My Eyes Off Of You」(君の瞳に恋してる)です。
挿入歌の使われ方が良くて、上記のベトナム戦争当時アメリカで流行っていたであろうCan’t Take My Eyes Off Of Youは2度登場し、さらに葬儀を終えて酒場に集まってGod Bless Americaを歌うシーンなどからは“アメリカ国民”であることを象徴しているように感じ、ロシア民謡「コロブチカ」「カチューシャ」が流れるシーンはロシア系移民であるアイデンティティを象徴しているようでもあり、監督の挿入歌に対する想いみたいなものを感じます。この映画全体に感じることなのですが、静と動、明と暗などを重視しているシーンが多く観られます。暗い裏道を抜けると突然明るい室内になる賭博場のシーンは、ものすごい喧騒から一転して静寂が訪れ銃声だけが響いたり、鹿狩りのシーンでは仲間とふざけ合っている騒がしい明るい映像から、一頭の鹿に狙いを定めて自然の中を追い詰めていき、暗い森の中で訪れる静寂の中一発の銃声が響く描写とか、東洋思想で言う陰陽論ではないでしょうか。(あくまで個人的な感想ですが、ちょっと黒澤明監督的なものを感じます)

これからまだ何度も繰り返し観ることになるだろうな・・・・・・いやー映画ってほうとうにいいものですね。

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