日本教の社会学

2021年07月01日 16:59

「日本教の社会学」は小室直樹さんと山本七平さんの対談をまとめて本にしたもので、1981年に講談社より刊行され、2016年に再刊行されたものになります。山本七平さんは以前「空気の研究」で書きましたが、青山学院高等商業学部を卒業。野砲少尉としてマニラで戦い、戦後、山本書店を創設し、その日本文化と社会学を分析する独自の論考は「山本学」と称されている評論家です。
小室直樹博士は東京大学大学院法学政治学研究科修了。ミシガン大学、マサチューセッツ工科大学、ハーバード大学各大学院で研究生活を送り、「ソビエト帝国の崩壊」「天皇の原理」「日本の敗因」など多くの本を書かれています。

戦後の日本は民主主義国家にあらず、戦前の日本は軍国主義にあらず、政治、経済、宗教など叡智を尽くした自由で白熱した議論は面白く、後世に残したい1冊名著であることは間違いありません。しかし内容はどうだと問われるとなかなか説明しづらいです。例えば前書きを抜粋すると、小室直樹博士は『世界中どこにでもあり、日本にだけ存在しないものがある。それが宗教と論理だ。いやさらに正確にいえば、日本教というネガ宗教が日本を支配しているからだ。たぐいない変則社会である』またあとがきから抜粋すると、山本七平さんは『渋沢栄一、その彼の宗教は何かといえば、それはまさに日本教であり、それを新しい社会に適応していったといえます。この点で、日本教の社会学は、この一人物を分析しても析出し得るわけです』・・・少しはイメージが伝わったでしょうか・・・・内容は是非読んでみてもらいたいです。

不思議なのですが本筋には関係ないが、たまに授業中に先生が授業の内容から脱線していた話が面白くてずーと頭の中に残ることってありますよね、本の中でユーモアのとらえ方について関連した話題として触れていたのが印象に残ったので抜粋したいと思います。“アングロサクソン人というのは、英帝国にせよ、アメリカにせよ、文化を異にし、信仰を異にし、人種を異にする人がたくさんいるでしょう。だから立場を突き詰めていえばお互いに悪魔なんですね。しかし、それじゃ人間関係は成り立たち得ない。お前もこういうことをいう、おれもこういうことをいう。しかし、どうせ両方とも仮設にすぎないんじゃないか、そう真剣にならないようにいたしましょうということの宣言なんですよ、アングロサクソン的なジョークというのは。・・・・・・・・だから言論が仮説ではなくて、言霊信仰があるところにジョークの入り込む余地はありません。”うーん・・なるほどと思いました。しかし1981年当時と時代はだいぶ変わってきて日本でも文化・信仰・人種ほどではないかもしれませんが、立場の異異なる者が議論していかなければならない場面が増えていますので、ジョークは重要になってくるのではないでしょうか、考えてみたいと思います。

記事一覧を見る

powered by crayon(クレヨン)