「生誕100年激動のの時代に生きた二人の女優ー原節子と山口淑子」と題した特別展に興味があって、鎌倉市川喜多映画記念館に行ってきました。原節子さんと山口淑子(李香蘭、リ・シャンラン)さん、お二人とも1920年に生まれた同い年ということを初めて知りました。さらに原節子さんは晩年、鎌倉(浄明寺)で過ごされていた事は知っていたのですが、山口淑子さんも一時期鎌倉で生活されていた事も初めて知りました。原節子さんは「晩春」「麦秋」「東京物語」では小津安二郎監督、「めし」「山の音」では成瀬巳喜男監督、「白痴」「我が青春に悔いなし」では黒澤明監督の作品に出演。山口淑子さんは「白蘭の歌」渡辺邦男監督、「醜聞ースキャンダル」黒澤明監督、「果てしなき情熱」市川崑監督、ブロードウェイミュージカル「シャングリラ」などに出演しています。お二人とも伝説的な女優として記憶に残る存在ですが(もちろんリ・シャンランさんは「蘇州夜曲」「夜来香」などで歌手としても有名)、激動の時代を生きてイメージの異なるお二人ですが、女優を引退してからの生き方が全く違っている事は大変興味深く貴重な資料を拝見しました。原節子さんは1962年東宝創立30周年映画に出演後42歳で事実上の引退をして、小津安二郎監督が亡くなった時の北鎌倉の通夜に弔問に訪れてから公の場に姿を見せることはありませんでした。この頃から鎌倉で晩年を過ごされています。一方山口淑子さんは38歳で外交官大鷹弘さんと結婚を期に女優を引退し、ワイドショーの司会、ベトナム戦争やパレスチナ問題を取材するジャーナリストとして活躍、その後18年間にわたって参議院議員を務めています。戦前、戦中、戦後と大変な時代を送ってこられたお二人は2014年に山口淑子さん、2015年に原節子さんとお亡くなりになってしまっているので、激動の時代を生き抜いた人生をご自身はどう思っていたのかは想像するしかありません。自伝みたいなものを残してもらえたらぜひ読みたかったので少し残念です。
鎌倉市川喜多映画記念館では関連上映として「東京物語」「麦秋」の上映や、お二人にまつわるトークイベントなども企画されているのでぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。