最近、左足首を痛めてしまっていて走ることができず、もっぱらウォーキングに切り替えています。左足はもともと捻挫をすることが多くて痛めやすくなっているのですが、痛みが出ると距離を短くしたり、ウォーキングに切り替えたりして調節しています。高血圧や糖尿病、ロコモ、骨粗しょう症、うつ病など運動が体に良いということは臨床的あるいは統計的に証明されている事実ですが、これには「適度な」という縛りがついています。基礎疾患を持っている方や障害を持っている方、高齢の方や若年層の方などそれぞれ個々の事情によって「適度な」の基準は違ってくると思います(もちろん痛みのある部分を抱えている場合も)。なかなか「適度な」と言われても自分自身がよく判っていない(把握しきれない)こともあります。
近年ある研究ではその「適度な」を数値化しようと、運動を筋収縮と置き換えて考え、マイオカイン(ILー6など)という骨格筋から分泌されている複数の生理活性因子を指標として、運動の健康効果を生体分子の振る舞いで理解しようとする試みが行われています。またさらに別の研究では慢性炎症に対して適度な運動は、ILー6(上記にも登場した)の増加は、ILー10、コルチゾールやILー1Rαなどの炎症抑制性因子の増加を伴って、抗炎症に働くという研究もあり、多発性硬化症やリウマチ性疾患といった慢性炎症疾患の治療に効果があると考えられています。これは慢性腰痛や五十肩などの慢性炎症疾患の症状を抑えるため、適度な運動は効果がある証拠にもなるのではないでしょうか。この慢性炎症に対する研究を行った上村大輔博士は、今後運動が強制的なものか自発的なものかまたは身体を動かすことが好きか嫌いなのかといった心理・精神面からも包括的に研究を行う必要を語っています(分子心理免疫学の創生を目指しているそうです)。
これからは運動前後の血液検査で最適な運動メニューを作成してくれるAIなどが現れるかもしれません。今後の研究を期待して待ちたいと思います。
参考文献 実験医学 Vol.37 No8 2019.5