クオリアと人工意識

2020年07月30日 16:28

脳とクオリアを読んで以来、茂木健一郎博士の本は数多く読ませていただいています。今回16年ぶりの書き下ろしということで、早速「クオリアと人工意識」を購入しました(7月20日出版されたばかり)。なんと言ってもこの本が英語の翻訳本ではなく“日本語!”で読めることが嬉しいです。脳科学の一般向け図書は英語で書かれていることがもちろん圧倒的に多く、英語で読めない私は翻訳本を買うことになります。値段もおのずと高くなりだいたい3000円前後することが多いのではないでしょうか。日本の研究者の方は、論文を書くことももちろん重要だと思いますが、一般向けに最先端の研究をわかりやすく伝えてもらえるような本を書いてもらえるとありがたいなあと思っています。

今回のエピローグには驚かされました、『一人ひとりの意識が別々にあるというのは、生命を維持する上ではでは必要な、しかし究極的には間違っている幻想だ。本当は、この世界には、たった一つの「意識」しかないのだ。』(エピローグより抜粋)この考え方は今までTwitterやLINEブログやYouTubeで語られていたものにはなかったものでした。確かに「私」の「意識」の連続性という謎には、「時間」の流れの謎が関係している(第10章より抜粋)とすれば、その考え方もありなのかも知れないですが、かなり難しいので今後じっくり考えたいと思います。

なんと言っても茂木博士の真骨頂というか茂木博士らしいのが第8章ではないかと思います。ここでは「自由意志」(自分の意思が自分の自由になるという仮説)をクオリアや意識ー無意識とともに身体性に関連付けてわかりやすく解説してくれています。意識の属性を、クオリアに満ち、オーバーフローによって特徴づけられる「感覚」と、自分の行動や決断を自由に選択できる「行為」の部分に分類して、生物としての重要であるのは「行為」の部分であるとしています。「自由意志」は総合的な判断つまり無意識下にある個人的な価値判断(評価関数)や身体性(物理的な身体があることによって、環境との相互作用ができることにより、学習や知能にもたらす効果や性質を表す)に深く結びついており、そこに解く鍵があるとしている。

脳科学好きな鍼灸師としてよく考えさせられる、例えばイップスやフロー、メンタルトレーニング、呼吸、歩行、ランニングフォーム、首の動き、視線、睡眠、便通などなど・・・は意識と無意識と身体性に関係していると思っていますので、この部分に関しての書き下ろしが今後あるのではないかと期待しています。

ブログでは書き切れないのですが、一般向けに書かれた勉強にもなる面白い本なので、ぜひ読んでみてください、人工知能と人工意識についてはこのブログ触れていませんが本の中ではどちらかというとそちらがメインになっています。

記事一覧を見る

powered by crayon(クレヨン)