森林業について

2020年07月17日 08:42

半世紀以上にわたって森林生態学、森林運営、国有林経営を研究し、ドイツでも教鞭を取ったこともある村尾行一博士によって書かれた「森林業」を読みました。昨日ブログで書きました鎌倉広町緑地に行く前に、森林について学んでおこうと思ったのがきっかけでした。内容を短くまとめると日本の林業はスギ・ヒノキの木材栽培業から、ドイツの森を手本とした森の恵みをていねいに引き出す総合林業へ転換すべきではないか?という日本林業回生論でした。大きく分けるとロマン主義思想とともに発展し、一大産業へと成長し、世界をリードするドイツ森林運営の思想と、木材生産の実践などを解説したパート①と、それを踏まえて、21世紀の日本社会にふさわしい、生産・流通の徹底的な情報化、乾燥管理、天然更新から焼畑林業までを提言するパート②の2つに分かれています。

パート①は林業に携わっているものでなくても“なるほど”と思う部分が多くありました。ドイツ森林業はロマン主義の申し子なのだそうです、フランス革命とナポレオン主義(ナポレオン戦争でドイツは荒廃した)、それに先行する啓蒙主義は人工、理性、合理主義、普遍性、画一性、進歩を提唱した。そのアンチテーゼであるロマン主義は自然、感性、主観、情念、固有性、多様性、形式の自由、歴史、風俗を肯定する。こうした自然の価値を発見したロマン主義を時代精神に一具現としてドイツ林学が生まれたそうです。ちなみにロマン派音楽を開幕したベートーベンはハイリゲンシュタット(オーストリア)の森から「田園交響曲」を生み(このブログも田園を聴きながら描いてます)、ロマン派音楽の最高峰ワーグナーの「タンホイザー」「ローエングリーン」「ジークフリート」も森が主題となっている。また国立公園などの森林も多いバイエルン南北縦貫街道はロマンチック街道を名付けられています。

さらにミュンヘンの都市林について触れている箇所があって、ミュンヘンといえばBMWやシーメンス、バイエルなどのドイツを代表とする企業の拠点となっているところですが、そこの住民が広い都市林で散歩をし、サイクリングし、乗馬し、飲食し、休息したりすることや、絵画や演奏の芸術活動や野草・薬草・キノコなどを採取して楽しむことが描かれています。都市と森林を別々の立地とせず、人間と自然との共生の地とするドイツの思想は見習うところがあるのではないかと思います。鎌倉市のホームページで緑地の保全・緑化の推進などの計画を見ると、もともとバイエルン州や・ミュンヘンの都市と規模や予算の面では叶わない思いますが、考え方は近くなっているので一市民として今後の検討を期待しています。

記事一覧を見る

powered by crayon(クレヨン)