ヒルビリー・エレジー

2026年05月06日 11:33

「ヒルビリー・エレジー」J.D.ヴァンス著、関根光弘、山田文訳を読みました。著者のアメリカ合衆国第50代副大統領、J.D.ヴァンス副大統領は、アメリカ中西部オハイオ州ミドルタウンの労働者階級の家庭に育ち、複雑な家庭環境の中で少年期を過ごした。高校卒業後に海兵隊へ入隊し、イラク戦争に従軍した経験を持つ。除隊後はオハイオ州立大学で政治学と哲学を学び、さらにイェール大学ロースクールへ進学して法務博士号(J.D.)を取得した。卒業後は企業弁護士として働いたのち、投資家ピーター・ティールの支援を受けてベンチャーキャピタルの世界に入り、スタートアップ投資に携わった。2022年、トランプ前大統領の強い支持を受けてオハイオ州選出の上院議員に当選し、政界入りを果たした。産業空洞化や薬物依存、家庭崩壊といったRust  Beltの社会問題を重視する姿勢は、政治的アイデンティティの中心となっている。2024年にはトランプ大統領候補より副大統領候補に指名され、選挙勝利を経て2025年1月20日にアメリカ合衆国第50代副大統領に就任した。就任時40歳で、アメリカ史上最も若い副大統領の一人である。

この本は、アメリカ中西部とアパラチア地方に暮らす白人労働者階級の現実を、自身の生い立ちを通して描いた回想録である。オハイオ州ミドルタウンで育った著者は、薬物依存や家庭内暴力に苦しむ母親のもとで不安定な生活を送り、貧困が文化として受け継がれていく様子を体験する。粗野だが強い愛情を持つ祖母が唯一の支えとなり、「貧困の連鎖」から抜け出す道を模索していく。高校卒業後に入隊した海兵隊で、規律や責任感を学び、人生を立て直しす転機を迎える。その後、大学を経てイェール大学ロースクールに進学するが、エリート社会との文化的な隔たりに苦しみながらも、安定した家庭環境や社会資本が人生に与える影響を理解していく。こうした経験を通じて、「個人の努力では越えられない壁」と「それでも努力が必要な現実」という二重の構造を描きだ出す。
本書は、著者の成長物語であると同時に、白人労働者階級が抱える怒りや絶望を内部から示した社会分析として大きな反響を呼び、現代アメリカを理解する重要な作品と位置付けられている。

回想録になると思いますが、ラストベルトにおける白人労働者の現実というノンフィクション作品とも言えそうです。ヴァンス副大統領の考え方や背景、トランプ大統領との違いなどが読み取れる作品だと思います。政権内での政策不一致はあり得ないのでしょうが、むしろ考え方の多様性は民主主義的な健全性から考えると必要なのではないかと感じます。元海兵隊員でありイラク戦争へも従軍したことのある副大統領は、現在のイランとの戦争についてどう考えているのでしょう?個人的な考え方を公に語ることはないでしょうが、一刻も早く停戦、終戦を迎えて貰いたいと願っている者としては・・・聞いてみたいです。

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