無印良品というブランドをご存知でしょうか?
1970年代に西友がPBブランドを拡充させるべくラインナップを増やし、英語のno brand goodsを和訳した「無印良品」をブランド名として西友のほか、西武百貨店、ファミリーマート等で販売を開始したのが始まりです。当時セゾングループ代表だった堤清二さんは企画立ち上げの経緯について、哲学者のジャン・ボードリヤールさんの「消費社会の神話と構造」などに触発されて商品にブランド名が付くだけで価格が上昇する現象に疑問を持ち、ブランドを与えない事で価格を抑える方が消費者に喜ばれると考えたことが動機になったと述べています。しかし良い商品を揃える企画力などで「無印良品」は現在では立派なブランドになっているのではないかと思います。
そのMUJIcom(無印良品の店舗)がホテルメトロポリタン鎌倉の開業と同時に、ホテル1階にCafe & mealとともに4月24日オープンしました。すでに何度か利用させてもらっていますが、冷凍食品、レトルトなどの食品から、ちょっとおしゃれなたくさんの種類があるお茶、インナーウエアーまで(さらに生活雑貨、衣料品、文具まで)たくさんの商品が揃っています。鎌倉店は特殊なのかもしれませんが、本を売っているスペースが大きくとられています(入り口付近に大きくコーナーが設けられている)。観光案内やお店紹介の様なガイド本はわかるのですが、MUJI BOOKSという文庫本(無印良品計画が出版している文庫でこれもPB?)が置いてあって、これは人と物をつなぐ「人物シリーズ」なのだそうです。
シリーズは全部で12人編出版されており、鎌倉店には柳宗悦編、小津安二郎編、伊丹十三編、白洲正子編の4冊置いてありました。面白そうだったので小津安二郎編を手にしてみたのですが、ゆかりの品のエピソードやエッセイ、発言録など気軽に楽しく読める1冊でした。面白かったのは、小津監督が松竹に入社した時は日本映画は3本しか観てなくて、アメリカ映画を観て(観ている映画はほぼ洋画だったそうです)映画監督になると決めたエピソードは初めて知りました。中でも納得したのが “何でもないものも二度と現れない故にこの世のものは限りなく貴い“ と覚書に記していた事で、日本映画を撮る上での小津監督の一貫したテーマは“ものの哀れ”であることがよくわかります。その他の人物についても興味があるので、いずれ読んでみたいと思います。
ちなみに“ものの哀れ”については小林秀雄著の「本居宣長」現代訳本を買ってあるのですが、なかなか手をつけられないでいます、いつの日か3年ぐらいかけて読み終えられればいいなと考えています。