杉原千畝(persona non grata)

2020年04月04日 08:48

映画「杉原千畝 スギハラチウネ」2015年(唐沢寿明主演版)をみて以前読んでいた本「杉原千畝 情報に賭けた外交官」白石仁章著を読み返してみました。日本の外交官でリトアニアのカナウス領事館に領事代理として赴任していた杉原さんは、ドイツの迫害によりポーランドなど欧州各地から逃れてきた避難民(多くはユダヤ系避難民)に、外務省の訓令に反して大量のビザ(通過査証)を発給して避難民を救ったことで知られていますが、この本は杉原さんのインテリジェンスオフィサー(情報将校と訳される事が多い)情報のプロフェッショナルとしての側面から語られています。

「人道上、どうしても拒否は出来ない」と考え本省の注意を顧みずにビザ発給を決めた後、ただ発給を闇雲に続ければどこかでビザが無効になって、避難民を目的地までたどり着かせてあげることは出来ない。最終的に避難民を目的地までどうしたらたどり着かせる事ができるか、自分に出来ることと、おそらく誰かの協力がなけれは出来ないことなどを見極め、状況を全体的に俯瞰して見ることにより、冷静に分析して緻密に計画して、ベストのタイミングで大胆に行動を起こして計画を進めてゆく、不測の事態には予測をして準備を怠らず、想定外の事態には迅速に対応して計画全体に変更が生じないよう気を配る。この本の中には本省との電報のやり取りや(かなり意図的に発出するタイミングを操作した形跡が見受けられる)杉原さん以外にも避難民の通過に際して協力した人たちについても登場します(駐ウラジオストック総領事代理 根井三郎さんなど)。

これは想像に過ぎないのですが、杉原さんはこの計画をするにあたって、本省やその他にも人道上この件に心の中で(表面上はともかく)賛同する人はいたはずで、その辺りの情報分析まで含めての計画だったのではないかと思っています。頭の良い人とはこのような人を言うのではないでしょうか、持っている知識(情報)を利用価値のあるものに高めて実際に使うことにできる人であって、大変尊敬できる方であり、少しでも見習う事ができればと思っています(なかなか難しいとは思いますが・・・・)。

ちなみに第二時大戦後帰国した杉原さんは藤沢市鵠沼松が岡で、その後亡くなるまで鎌倉市西鎌倉に住んでいたそうです。こうしたことから鎌倉市議会で「人道的行為を尽くされた杉原千畝さんを顕彰することに関する決議」が全会一致で可決されています。お墓はここ浄明寺から近い鎌倉霊園にあるそうです。

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