戦地の図書館

2024年02月15日 14:10

「戦地の図書館」モリー・グプティル・マニング著を読みました。著者のモリー・グプティル・マニングさんはニューヨーク州立大学オルバニー校で米国史を学び、2002年にイェシーヴァー大学ベンジャミン・N・カードーゾ・ロースクールに入学。その後、第二巡回区連邦控訴裁判所で弁護士を務める弁護士さんです。この本でアメリカ図書館協会:ノタブル・ブック賞などを受賞し、ニューヨーク・タイムス・ベストセラー:ハードカバー・ノンフィクション部門2位にランクインしています。

この本では、ナチスが一億冊以上の本を焚書したことに対抗するために始まった図書館員が戦地の兵士に本を送る「戦勝図書運動」や、兵士のポケットに入るように軍と出版業界が協力して開発した、小型で軽量で耐久性の高いペーパーバック「兵隊文庫」について詳細に調査し紹介しています。本が兵士たちに与えた精神的な支えと教養の向上、戦争という暴力の中で人間の尊厳と自由を守る役割を果たしたことを指摘し、戦後のアメリカ社会に及ぼした影響を描き出しています。アメリカの図書館員、軍、出版業界がどのように史上最大の図書作戦を展開したか、そしてその作戦が兵士たちの心と知性にどんな影響を与えたかを詳細に調査し、鮮やかに書き出したノンフィクションです。(チャットGPT作)
本の中では多くの兵士からの手紙が紹介されています。その内容からうかがえるように、戦地に兵隊文庫が届いた時、彼らは我先にと兵隊文庫を手に取り、ポケットに忍ばせてたとえ前線であっても暇を見つけては読み、腹の底から笑い、元気になった・・・兵士の喜びはとてつもなく大きかったようです。ヒトラーは一億冊を燃やし、アメリカはそれを上回る一億四千万冊もの本を戦場へ送った。まさに「本の力」を考えさせられる一冊です。ぜひ読んでみてくださいおすすめです。

残念ながら「兵隊文庫」の本は、いくつかこの本の中で紹介されていますが、読んだことがありませんでした。繰り返し本の中で登場する兵士に大人気だった「ブルックリン横丁」という本があるのですが、ベティ・スミスの自伝的長編小説の原題で1900年代初頭のブルックリンで暮らすフランシー・ノーランという少女の成長物語になっています。1943年に出版され、ベストセラーになっています。日本語でも翻訳されているのですが簡単に手に入らなかったので、エリア・カザン監督(ちなみに「紳士協定」でアカデミー監督賞を受賞、「エデンの東」はエリア・カザン監督です)で1945年に映画化された「ブルックリン横丁」(原題:A Tree Grows in Brooklyn)を観ました。ごく普通の貧しい一家の生活を淡々と描いている作品で、戦争という異常な状況下に置かれている兵士には故郷の日常が感じられ、読書している間は現実を忘れることができ、その間だけでも自らの故郷に引き戻してくれる時間が心に響いたのではないでしょうか。淡々とごく普通の一家の日常を描いている作品は1950年代などの日本映画でも多く見受けられると思いますが、私の好きな映画監督である成瀬巳喜男監督の作品にも共通するところがあるのではないかと感じました。もしかしたら影響を受けていたのかもしれません。こちらの映画も併せておすすめです、ぜひご覧になってみてください

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