「集団の思い込み」を打ち砕く技術

2023年09月21日 14:41

「集団の思い込み」を打ち砕く技術トッド・ローズ著を読みました。トッド・ローズ博士は、心理学者であり、個性学という分野の第一人者です。博士は、ハーバード大学教育大学院で博士号を取得し、同大学院の心理学教授として「個性学研究所」を設立しました。また、誰もが活気ある社会で満ち足りた人生を送れるような世界の実現を目指すシンクタンク「ポピュレース」の共同設立者・代表でもあります。他の著書には「ハーバードの個性学入門ー平均思考は捨てなさい」や「Dark Houseー好きなことだけで生きる人が成功する時代」などがあります。

この本では、社会や組織、個人にとって有害な「集合的幻想」という現象について解説しています。集合的幻想とは、事実に見えたことが実際には思い込みだったにもかかわらず、間違った認識に基づいて大勢が行動することを指します。例えば、品不足と勘違いして買い占めに走り、本当に品不足を引き起こすことや、欠陥があるとの誤解により、移植用の腎臓の10%以上が廃棄されることなどが挙げられています。この「集合的幻想」が、どのようにして発生し、どのような影響を及ぼすのかを、脳科学や心理学の知見と多くの事例をもとに分析し、さらに、批判的思考の重要性を強調し、情報を客観的に評価することや、信頼関係を築き、不信の幻想を打ち砕くなどの、集団的幻想に陥らないために必要な思考や行動の方法を示してくれます。

私自身は、疑り深い性格なのか、「本当にこれで誰も文句言わないの?」とか「このルール誰が決めたの?」とか空気を読まず言ってしまうことが多いので、どちらかと言うと「みんなと同じ」じゃない方にいることが多いような気がします。ただ本当は「みんなと同じ」側にいて、安心したり、面倒なことを考えずに手間を省いたりしたいと思っている方なのですが・・。“みんなはこう思っているはずだ“と間違った思い込みで大勢が突き進んで仕舞えば、結果的に誰も望まない行動を誰もが取るハメになる。博士の言う幻想につながる「同調の罠」は危険です。詳しいことはぜひ本を読んでください。

最後に本の中で引用されているヴァーツラフ・ハヴェルの言葉です。(1989年ビロード革命の中心人物、チェコスロバキア大統領とチェコ共和国大統領を務める)

人間としての当然の尊厳、道徳的高潔さ、存在を表現する自由、実世界からの超越感への願望を誰しも持っている。しかし同時に、偽りのうちに生きることを大なり小なり甘受する傾向もある。どういうわけか本来の人間性を不敬にも矮小化し、功利主義に屈してしまう。名もなき大衆に合流し、心地よい流れに乗って偽りの生活という川を下ろうとする気持ちが、一人ひとりの中にある。

考えさせられます・・・・・。

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