思い出せない脳

2023年06月29日 15:44

「思い出せない脳」澤田誠著を読みました。著者の澤田博士は東京工業大学大学院総合理工学研究科博士後期課程生命化学専攻修了。理学博士であり、専門は神経科学、神経薬理学。米国国立衛生研究所ポストドクトラルフェロー、科学技術振興事業団「さきがけ研究21」研究員、藤田保健衛生大学(現:藤田医科大学)総合医科学研究所教授を経て、2005年名古屋大学環境医学研究所教授。2012年同研究所所長に就任しています。脳の免疫機能を担うグリア細胞の一種ミクログリアの研究を20年以上にわたって行っている方です。個人的には薬剤師という仕事柄(DDS:特にドラッグデリバリーシステムは自身の卒業論文に関係しているので)、澤田博士が株式会社ティッシューターゲティングジャパンと連携して行っている、脳移行性ペプチドによる薬剤の脳送達技術提供と脳疾患治療薬の開発には興味があります。

やっと謎が解けました・・人の名前や物の名前がすぐそこまで出かかっているのになかなか出てこないことってよくありますよね。人の名前では、さっきテレビCMにでていた人の顔ははっきりと思い出せるのに名前が出てこなかったり、いつも観ている野球選手の顔や背番号まで出てきているのに名前が思い出せなかったり・・、物の名前では、いつ何に使ったかははっきりと覚えていてもなかなかでてこないことありますよね、ピーラーとか修正テープとか名前が出てこないことってありませんか?この本を読んで理由がわかりました。詳しくは本を読んでもらいたいのですが、記憶は神経細胞のひとつひとつに保管されているわけではなく、複数のネットワークに保管されています、そこで脳は、記憶を辿るときに情報がシャープに伝わるように「周辺抑制」というメカニズムを持っているそうで(心理学では「検索誘導性忘却」という)、その働きによって顔やどんなテレビ番組に出ていたなどの情報は引き出せても肝心な名前が、思い出そうとすればするほど、思い出せなくなるそうです。特に名前は意味記憶に属するので思い出しにくく、思い出すのをやめてみるとふと思い出したりすることがあると述べられています。うまく説明できてませんが、この本を読んでいただければ理由がわかります。
もう1つ気になるところがあったので抜粋します、『何かに注意を向ける習慣をつけるのも、脳にとって良い効果を生みます。散歩や通勤、通学時に周りの風景や状況を意識的に観察するのです。すると、今まで気づかなかった変化が分かるようになってくると思います。例えば、昨日は蕾だった花が今日は咲いていることや、いつも同じ席に座っている人が今日は立っていることなどです。人間の脳は変化の量によって物事を認識するようにできています。ー中略ー外界の変化に加えて、自分の身体や脳の状態に注意を向けるのも良いでしょう。ー中略ー自分の情動や身体の状態が分かるようになれば、脳に入ってくる刺激が、自分のマインドセットにどのような影響を与えるのかも考えることができるようになります』ここの部分は注目です。今後の認知症予防の観点からもカギになるような気がします。じっくり考えてみたいと思います。

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