「大名倒産」(2022年文春文庫上・下版)浅田次郎著を読みました。ちなみに浅田次郎さんは多くの小説(特に今回のような時代小説)を書いていますが、これまであまり読んだことがなく「地下鉄に乗って」という長編小説を読み、映画化された作品を観たことがあるくらいでした。
あらすじは、江戸時代の天下泰平260年の間に積もりに積もった藩の借金25万両(現在の100億程度の価値)。あまりの巨額に嫡男はショック死ー丹生山松平家12代当主は、庶民の四男・小四郎に家督を譲るとひそかに「倒産」の準備を進め、逃げ切りを狙う。そうとは知らぬクソがつくほどの真面目で誠実な小四郎には、金がないのに次兄の結婚や大名行列と、次から次へと難題が降りかかる。貧乏神や七福神が見守る中、庶民から一国の大名となった小四郎は、越後丹生山藩を潰すまい、領地の民を苦しませまいと奮闘する。果たして奇跡の「経営再建」は成るのか?・・・・・・。といった感じです(表紙あらすじ抜粋)。
考えてみれば商人は門口税や地子銭などの税金が安いようなので、豪商に幕府や藩が御用金という形で上納させたのはある一定の合理性はあるように思います。官僚制度や年貢などの徴税制度がきちんとしていたが故に、260年も安泰な世の中が続いて緩んでしまったというか、硬直して何も変えられなくなったのでしょうか?そもそも江戸時代の年貢中心の徴税が理にかなっていたのか?という問題があると思います。がしかし返す当てのない借金をして、莫大な数字になってしまって身動き取れなくなったら踏み倒すのはいかがなものだろうか?江戸幕府も何度か改革を行なっていますが、徴税制度の根本的な見直しまで出来なかったようです。なんとなく現代にも通じるような気がしますが・・・。
今年6月には映画化もされるそうです。(貧乏神や七福神の登場シーンはどうするのだろうか?)計画倒産を企てる話ですが、暗いところはなく、貧乏神や七福神まで登場して、涙あり笑ありのエンタメ小説になっています。ぜひ読んでみてください。