親切の人類史

2023年03月31日 08:16

「親切の人類史」マイケル・E・マカロー著を読みました。著者のマイケル・E・マカロー博士はカルフォルニア大学サンディエゴ校の心理学教授。アメリカ心理学会とパーソナリティ心理学・社会心理学会においてフェローを務める。人間の社会性に関する、進化的・認知的な基盤に関心があり、対人関係における「許し」に初めて着目し、実験的に研究する方法を開発した研究者のひとり。ほかにも、「感謝」「復讐」「向社会的行動」「宗教的な認知」「異なる時点での選択」などを実験的に研究する方法の開発を行ってきた。近年では自制心やホルモン(オキシトシン)が持つ社会的影響について研究を行っている。(著者略歴参照)

大雑把に内容を要約すればこんな感じです、利他行動に関する幾つかの理論の要点とその妥当性を検討したのち、歴史を通して力を発揮してきた人間特有の能力を鮮やかに提示する。人類史上もっとも寛大な「思いやり黄金時代」を生きる私たち。ここへ至るまでの道程を照らしだす、本能と理性のビッグヒストリー。(背表紙解説より)

人はいかにして利他の心を獲得したのか?・・・考えてみれば生物学の自然淘汰からすれば、寛大に他者を思いやる個体の遺伝子は、狡猾は個体に出し抜かれて繁殖機会を奪われて淘汰されてしまうのではなかろうか?・・・・確かにそうですよね。人間の「利他の心」はどのように説明がつくのか?何か特別な説明が必要なのか?著者はこの本の中で生物学だけでは説明のつかないこの謎に挑んでいます。3つの鍵は、互恵性を好む本能、人助けをすることで徳の高い人物と見られたいという欲求、もっとも重要なのは、もっとも望ましい行為を突き止めようとする実践理性としています。(実践理性については本の中で詳しく触れていますのでぜひ読んでみてください)

著者は最終章で「他者への思いやりの未来」と題して、こう語っています。思いやりは、私たちに感謝と栄誉を授ける。貧困と絶望の副作用から私たちを守る。経済を弱らせず、むしろ成長させる。人々に自分の人生への責任を持たせる。生きる意味と充実感をもたらす。〈中略〉だからこそ、個人の生活の中でも公共空間においても、私たちが重要と考える事柄について、論理的思考と議論を歓迎する環境を維持することが重要なのだ。・・・・・・・じっくりと考えてみたいと思います。

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