アルキメデスの大戦

2020年02月08日 08:45

観たかった映画を3本まとめてi-tunesで観ました、その中に「アルキメデスの大戦」という映画がありました。同名の漫画を原作としているのですが、大体のあらすじはこんな感じです。世界最大の巨大戦艦建造計画を進めようとしていた海軍上層部に対し、時代遅れだと考え空母建造計画の代替案を出して待ったを掛けようとする山本五十六(舘ひろし)。「大和」建造賛成派は建造費を不正に安く見積もって計画案を無理やり通そうとします。そこで山本五十六は数学の天才と東京帝国大学で言われていた櫂(菅田将暉)を抜擢して、見積もりの不正を暴き時代遅れの戦艦建造を阻止して空母を手に入れようとします。結末がどうなったかは映画を見てください。

この映画の中で櫂は“数字は嘘はつかない”と言っていて、その通り緻密な計算を積み重ね答えを導き出します。そこで以前読んだある本について思い出し読み直して観ました(かなり前だったので)。それは猪瀬直樹著「昭和16年の敗戦」という本です。この話は史実に基づいているのですが、日米開戦直前の夏に軍人、官僚、民間から集められた次世代を担う若手のエリート三十六人が、総力戦研究所に集められて対米戦の机上演習を重ねてある結論に至ります。

戦争はすでに武力戦ではなく国力をかけた総力戦となっており、エリートたちは地道に日米のあらゆる数字を集め計算をしてたどり着いた結果は「日米戦日本必敗」でした。同じデーターを現実の政府が持っていなかったわけではありません、意思決定の場において、数字を都合よく解釈したり、都合のわるい数字は無視したのです。特に生命線である石油の数字は戦争ありきで作り上げられたと言っても過言ではありません。数字は嘘をつかなくても数字を扱う人間は数字を無視したり嘘をつくのです。

これを近い将来に置き換えてみたらどうでしょうか、総力戦研究所に集められたエリートに代わってAIが机上演習をしたとします、もし戦争ありきと考える勢力が権力の中枢にいたらAIに与える数字を操作する誘惑に勝てるでしょうか?AIの進歩やできる能力の評価は一旦ここでは置くとして、人間の意思決定はどうあるべきか考えさせられました。

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