「君のクイズ」小川哲著を読みました。この作品は2023年本屋大賞のノミネート作品となっています。著者の小川哲氏は東京大学理科一類を経て東京大学教養学部卒業し、東京大学大学院総合文化研究科博士課程中退(ちなみに大学3年の時に理系から文系に転身したそうです)。博士課程2年時の2015年投稿作「ユートロニカのこちら側」で第3回ハヤカワSFコンテストの大賞を受賞し、作家デビューしています。大学院在学中は、数学者・論理学者のアラン・チューリングについて研究されています。経歴もそうですが、小説を書く際は、プロットを立てずに書くとのことで、小説家としては今までにない新しいタイプの方ではないかと思いました。
クイズ番組「Qー1グランプリ」決勝に出場した三島玲央は、対戦相手・本庄絆がまだ一文字も問題が読まれぬうちにボタンを押し正解し、優勝を果たすという不可解な事態を訝しむ。いったい彼はなぜ正解できたのか?真相を解明しようと彼について調べ、決勝を1問ずつ振り返る三島はやがてーー。(本の帯に書かれているあらすじ紹介文より)だいたいあらすじを書くとこんな感じです。クイズ番組を題材にしたミステリーといったジャンルになるかと思うのですが、エドガー・アラン・ポーやアーサー・コナン・ドイル、アガサ・クリスティーなどのミステリーとはちょっと違った感覚のミステリーです。正統派の推理小説ファンからするとやや違和感があるのは否めない感じがしますが、『作品中で何らかの謎が提示されやがてそれが解かれてゆく』といった定義に当てはめれは新感覚エンターテインメントミステリーといったところでしょうか。
ネタバレになってしまうので詳しくは書けませんが、クイズをAIがその膨大なメモリーから忖度なしにランダムに出題したら、人間は問題の半分も答えられないかもしれません。そう考えるとクイズは人間同士の駆け引きを楽しむものなのかもしれません。クイズ番組もショーである以上、延々と答えられない問題が出題されたら成立しないのでしょう。全てにおいて完璧に公平で、全く運に左右されることのない演出などはできるはずもなく、どのあたりにその面白くて、楽しめるツボを置くべきなのか?ちょっと考えさせられました。