大衆の狂気

2023年02月24日 08:11

「大衆の狂気」ダグラス・マレー著を読みました。著者のダグラス・マレー氏は英国人ジャーナリストで、政治・社会評論家です。英国の代表的雑誌の一つ〈スペクテイター〉誌の共同編集者。(ちなみにスペクテイターの創刊は1828年で、世界最古の週刊誌。主なテーマは政治と文化であり、政治には保守的な姿勢を取る。スペクテイターの編集長職は、イギリス保守党の要職への足掛かりとなることがしばしばあり、かつて編集長を務めた人物にはボリス・ジョンソン元首相がいる。)〈タイムズ〉紙〈ウォール・ストリート・ジャーナル〉紙などへ多数寄稿し、英国議会、欧州議会、ホワイトハウスでの講演実績もある。

「マレーの最新刊は、すばらしいという言葉ではもの足りない。誰もが読むべきだし、誰もが読まなければならない。ウォーク(社会的不公正や差別に対する意識が高いこと)が流行するなかではびこっているあきれるほどあからさまな矛盾や偽善を、容赦なく暴き出している」リチャード・ドーキンス博士の書評です。

この本の中で、マレー氏は行きすぎた「多様性尊重」による社会分断や憎悪の実態を明らかにしています、LGBT、フェミニズム、反レイシズムをめぐる主にダイバーシティー先進国で広がる欺瞞や対立とは何か。さらにこの状況が続くのであれば、行き着く先は、ますます社会が細分化され、怒りや暴力に満ちていくばかりか、あらゆる権利の向上(評価すべき向上も含め)に対する反動の可能性が高まり、人種差別に人種差別で対抗し、性に基づく中傷に、性に基づく中傷で対抗する未来が待っていると語っています。

確かにこの問題は根が深く慎重に考えなければならない問題だと思いました。多様性が認められる社会が重要なのは揺るぎないと思うのですが、物事の定義が曖昧なまま、急に言葉が一人歩きをしはじめて、多くの人が引きずられていってしまうことは過去にもたくさんあったと思うのですが、SNSの時代になるとその速度があまりにも速すぎるのではないかと思うことがあります。日本でも「〜警察」のような同調圧力を強いる世間的な(山本七平さん曰く)空気があるようですが、多様性が認められると同時に寛容である社会とは何かを考えてみたいと思います。

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