「教養としてのラテン語の授業」ハン・ドンイル著を読みました。著者のハン・ドンイル博士は東アジア初のバチカン裁判所の弁護士。2001年にローマに留学し、法王庁ラテラノ大学で2003年に教会法学修士号を最優秀で修了、2004年には同大学院で教会法学博士号を最優秀で取得。韓国とローマを行き来しながらイタリア法務法人で働き、その傍ら、西江大学でラテン語の講義を担当していました。この本は、ハン・ドンイル博士がソウルの西江大学で2010年から2016年まで教鞭を執っていた「初級・中級ラテン語」の授業内容をまとめたものです。ラテン語を母語とする言語を使用している国々の歴史、文化、法律などに焦点をあて、「ラテン語の向こう側に見える世界」の面白さを幅広く取り上げています。特にラテン語を公用語として採用していたローマ帝国(Imperium Romanumはラテン語です)は1世紀から2世紀頃の最盛期には地中海沿岸全域に加え、ヨーロッパはヒスパニア、ゲルマニア、ガリア、ブリタンニア、クリミア等、北アフリカ一帯、西アジアではメソポタミア、シリア、アルメニア、ペルシア西部などの広大な地域を支配していたため、これらの地域の歴史、文化、哲学、宗教など興味深く幅広い教養を学ぶことができます。「言葉はレンズである。古い言葉を通して世界を眺めるとき、古びることのない叡智がよみがえる」本の帯に寄せられた、批評家・随筆家の若松英輔氏のコメントです。詳しい内容についてはぜひ読んでみてください、面白いです。語学の教科書というよりもラテン語を通じて、西洋の歴史の源流を辿る話になっていて、「教養」というものを考えさせられる本です。
Carpe died 「今日を楽しめ」
Do ut des 「与えよ、さらば与えられん」
Desidero ergo sum 「私は欲望する。ゆえに存在する。」
Tempus est Optimus iudex 「時間は最も優れた裁判官である」
本を読んでメモを取ることはほとんどないのですが、今回はだいぶメモを取りました。現在ラテン語はバチカンの公用語であるものの、日常ではほとんど使われなくなった言葉です。しかし学術界では根強く用いられ続けており、またラテン語を語源とする日常用語は多くvirus(ウイルス)、corona(王冠)、in Vito (生体内で)ad lib(アドリブ)、ego(エゴ)など、何か言葉の中に歴史が埋め込まれているように感じます。ラテン語を通じていろいろな分野に広がっていく様(博士の講義)を読んでみると、本当に学びというものは無限なんだなあと思います。