熱源

2022年10月21日 08:11

「熱源」川越宗一著を読みました。第9回本屋が選ぶ時代小説大賞、第162回直木三十五賞を受賞している作品です。著者の川越宗一さんは会社員として勤める傍ら執筆活動をされて、40歳で2018年「大地に燦たり」で作家デビューしています。明治初期から太平洋戦争の終焉まで、樺太(サハリン)、北海道、ロシア(ソ連)、東京、南極と壮大なスケールで描く冒険歴史小説です。だいたいの内容はこんな感じです。樺太(サハリン)で生まれたアイヌ、ヤヨマネクフ。開拓使たちに故郷を奪われ、集団移住を強いられたのち、天然痘やコレラの流行で妻や多くの友人たちを亡くした彼は、やがて山辺安之助と名前を変え、再び樺太に戻ることを志す。一方、ブロニスワフ・ビウスツキは、リトアニアに生まれた。ロシアの強烈な同化政策により母語であるポーランド語を話すことも許されなかった彼は、皇帝の暗殺計画に巻き込まれ、苦役囚として樺太に送られる。日本人にされそうになったアイヌと、ロシア人にされそうになったポーランド人。文明を押し付けられ、それによってアイデンティティを揺るがされた経験を持つ二人が、樺太で出会い、自らが守り継ぎたいものの正体にたどり着く。樺太の厳しい風土やアイヌの風俗が鮮やかに描き出され、国家や民族、思想を超え、人と人が共に生きる姿が示される。(文藝春秋BOOKSホームページより)

熱源についてWikipediaで調べると、「周囲に対し高い温度を持った地点。エネルギー供給ポイントを指す。」と書いてありました。ブロニスワフは『弱肉強食の摂理と戦う』と言い。ヤヨマネクフは『俺たちはどんな世界でも、適応して生きていく』と言います。降りかかる理不尽に対して彼らはこういう答えを出すのですが、二人以外の登場する人物も、こうしたそれぞれに大事にしている熱源を持っています。人それぞれの熱源とは何か、自分にとっての熱源とは何か・・・・・考えさせられました。重い題材だと思いますが、とても読みやすい作品ですので、おすすめの一冊です。

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