地獄への潜入

2022年10月07日 08:21

「地獄への潜入 白人至上主義者たちのダーク・ウェブカルチャー」という本を読んでみました。原題はCulture Warlords my journey into the Dark Web of White Supremacyなので邦題はちょっと過激な題になってます。著者のタリア・ラヴィン氏はニューヨーカー誌、ニュー・リパブリック誌、ニューヨーク・タイムズ紙(書評欄)、ワシントン・ポスト紙、ヴィレッジ・ヴォイス紙などに寄稿しているフリーランスのライターで、私は、ユダヤ人であり、ジャーナリストであり、ファシズムを憎むツイッターユーザーであると本の中で自己紹介されています。この本では、ユダヤ人女性ライターが素性を偽り、時に金髪の白人ナチ・ガールとして、時にインセルとして、オンライン上の過激派コミュニティーに潜り込み、近年のレイシズムの動向を明らかにしていきます。冒頭の「はじめに」では、憎悪というものが、それを目にした者に対しても、それを作り出した者に対しても、どのような影響を与えるを描いた物語でもある。読者のみなさんを戦いに駆り立てる手引き書にもなるだろうとも書かれています。身分を偽った潜入調査なので賛否両論あると思いますが、ネット空間で広がっていったコミュニティーでなければこの調査は成立しなかったでしょうし、こうした手法をとらなければディープな世界の内情は知ることはできなかっただろうと思います。アジア人に対する人種差別なども報道される中で、こうしたレイシストによるダーク・ウェブカルチャーの存在は、かなり重苦しく感じます。この手の内容に弱い方にはお勧めできません。特に深刻に思えるのは、本の記述通り引用しますが(以下)・・・彼らは、科学者が法医学的に分析を加えて冷静に眺める必要のある新種の人間などではなかった。ひどく愚かな人間でもなく、極度の貧困に苦しむ人でもなく、深刻な社会問題に悩まされる人でもなく、社会的・経済的に特定の階層に属する人でもなかった。モンスターではなく、人間だった。大部分が男性だが、女性もいる。他人を憎み、人生の意味を憎しみに求め、憎しみをもとに連帯感を共有し、日々の生活の中では優しく気を配りながらも憎しみを深めていく人だ・・・・・・。こうした世界について知ることはできましたが、まだまだ完全に理解するには距離を感じます。いずれ暴力へと繋がってしまう憎悪、その根源について考えてみたいと思います。

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