「ベルファスト」ケネス・ブラナー監督2021年を観ました。今年のゴールデングローブ賞とアカデミー賞の脚本賞を受賞しており、Rotten tomatoesでは平均点10点満点で7.9点となっています。この映画を観るにあたっては、若干の予備知識が必要になります(先に調べてから観ればよかったのですが)。1969年の北アイルランドの首府ベルファストが舞台となっていて、北アイルランドでは1960年代後半からイギリスとアイルランドの領土問題が起こっています。Wikipediaによると、カトリックの少数派が被った教派分裂に反対する公民権運動から紛争は始まり、北アイルランドの帰属をめぐって、主にカトリックで構成されている共和派と民族派、主にプロテスタントで構成されている王党派と統一派が対立したことで、30年に及んで暴力が蔓延したとあります。もともとアイルランドがイギリスの植民地化されてから、入植者と原住民との間に隔離政策が行われたり、イングランド国教会が公的な宗教として確立され、カトリック教徒に対する宗教的迫害があったりと長年にわたる歴史的背景があるようなのですが、詳細は複雑に絡み合っていてきちんと理解しようと思うとなかなか難しいです。私が子供の頃は北アイルランド紛争というと爆弾テロ事件が起こっていたイメージがあります。
ストーリーはこんな感じです、ベルファストで生まれ育ったバディは家族と友達に囲まれ、映画と音楽を楽しみ、充実した毎日を過ごす9歳の少年。たくさんの笑顔と愛に包まれる日常は彼にとって完璧な世界だった。しかし、1969年8月15日、バディの穏やかな世界は突然の暴動により悪夢へと変わってしまう。プロテスタントの暴徒が、街のカトリック住民へ攻撃を始めたのだ。住民全てが顔馴染みで、まるで一つの家族ようだったベルファストは、この日を境に分断されていく。暴力と隣り合わせの日々のなか、バディと家族たちは故郷を離れる決断に迫られる・・・。(iTunesより)
白黒で撮っているのは監督の自伝的映画だからでしょうか、現代のベルファストから記憶を遡るような演出になっています。物語の背景が背景だけにかなり暗い映画(白黒だと余計に暗さが目立つのでは?と思ったのですが)かと思ったら、9歳の少年の目を通じて描かれているので、それほど暗さは感じませんでした。温かいみんなが家族のような街と我と彼を区別して暴力が蔓延している街、皆が助け合う温かい家庭と個々が徒党を組んで略奪、破壊をする集団。明と暗が交互に登場して、一つの街が両方の面を表しています。最終的にバディの家族は故郷を離れることになるのかは、ぜひご覧になってください。なぜ人は対立するのか?・・・・考えさせられました。