「英雄の証明」アスガル・ファルハーディー監督・脚本は、2021年のイラン映画です。(iTunes Storeで観ました)Rotten Tomatoesでは126件のレビューで支持率は95%、平均点は8/10となっています。ちなみに第74回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門では、日本映画「ドライブ・マイカー」などと共に上映されています。
イランの古都シラーズ。ラヒムは借金の罪で投獄され服役している。そんな彼の婚約者が偶然にも17枚の金貨を拾う。借金を返済すればその日にも出所できる彼にとって、まさに神からの贈り物のように思えた。しかし罪悪感に苛まれたラヒムは落とし主に返すことを決意。そのささやかな善行は、メディアに報じられると大反響を呼び“正直者の囚人”という美談の英雄に祭り上げられていく。ところが、SNSに広まったある噂をきっかけに状況は一変する。周囲の狂騒に翻弄され、無垢な吃音症の幼い息子をも残酷に巻き込んだ事件へと発展していく。
この映画はおすすめです、主人公が囚人というところは設定がちょっと特殊ですが、それを除けば日常で起こりそうなことが淡々と積み重なって物語が進行していきます。たまたまお金を拾う、心がざわついて誘惑に負けそうになるが、結果的に持ち主に返す。マスコミに取り上げられチヤホヤされる、SNSで有る事無い事書き込まれ叩かれる。世界中どこでもありそうな話です。中でもラヒムが刑務所に入った原因であるお金を借りた相手との確執は、これまたどこにでもある話のようですが物語の重要な部分であるように感じます。特に一部借金を返済して、残りの借金を返す約束をすれば示談にしてもらう交渉のシーンが印象的でした。
ちょっとずつ色々な出来事が積み重なっていくのですが、少しだけ何かをかけ違う仕掛けがしてあります。そのちょっとしたズレが主人公を翻弄していくことになるのですが、これはアスガル・ファルハーディー監督・脚本の手腕なのでしょうか・・・・上手いなあと感じました。最初から金貨などを拾わなければよかったのか?そもそも借金して返せなくなうような所業が良くなかったのか?はたまたマスコミにチヤホヤされて調子に乗ったのが良くないのか?幼い息子を巻き込んだせいなのか?どれをとってもこれが原因でこうなったというような出来事はありません・・・・・・・・・・・最終的にどうなったかは映画をご覧ください・・とても考えさせられる映画でした。