「スイッチ 悪意の実験」潮谷験著を読みました。著者の潮谷験さんは1978年京都府生まれ、この作品で2000年第63回メフィスト賞を受賞しデビューしています(その他については謎)。その選択が破滅を呼ぶ!・・大学校内で、「純粋な悪」の存在を証明する実験のアルバイトが持ちかけられた。参加した学生たちのスマホには、幸せな家族を破滅させるスイッチがインストールされる。押しても押さなくても1ヶ月後には100万円を超える報酬が手に入り、押すメリットはない。誰もが「押すわけがない」と思っていた、しかし・・・。(本の帯の紹介文から)
読み初めは、現実にはあり得ないだろう実験を設定することで、こんな時、人はどうするのだろう?といった心理(思考)実験のような展開をするのかと思いきや、後半に進むに従って推理を駆使したミステリ小説にだんだん変わっていきます。ミステリ小説なので殺人事件が起こり、謎は解明されていくのですが、殺人事件とその動機、悪意の実験、巻き込まれた人達の過去などが絡み合っているようで、ややぼんやりしているというかあっさりしている様な印象で、よく言えばどろどろして救いようがない展開ではなく、ほんわかした希望のある展開と言って良いと思います。個人的に言えばもう少しどろどろした、絡み合ってほぐしきれない人間の性の様なものが出ていてもよかったのではないかと思います。この辺は個人的な趣味もあると思いますのでぜひ読んでみてください。
ちなみにちょっと読んでいて気になったことがありまして、この小説は1章から9章まであり最後がエピローグになっているのですが、第1章立秋、第2章実験、第3章白露、第4章構築、第5章教祖、第6章誠実、第7章暴走、第8章犯人、第9章接見となっています。第1章立秋と第3章白露が二十四節気になっています。しかも立秋はよく使うのでわかりますが白露?・・あまり使うことはないのではないでしょうか。日付が登場して前後関係が重要になってくるのでその頃を表しているといえばその通りですが、あえて1章と3章だけ二十四節気にしているのは何か意味があるのか気になります。もしかしたら潮谷験さんの経歴に何か関係しているのかもしれません。最近歳のせいでしょうか、細かいことが気になりまして・・・・・。(ミステリ小説なので右京さん風に推理してみました)