「べリングキャット」エリオット・ヒギンズ著(原題:We are billingcat an intelligence agency for the people)を読みました。べリングキャットとは、イギリスに本拠を置く、調査報道機関及びそのウェブサイトです。ウェブサイトやSNSで公開されている情報を収集・分析するオープン・ソース・インテリジェンスを特徴とし、ハッキングや秘密の情報源は使わずに調査を行なっています。2014年7月にイギリス在住のエリオット・ヒギンズ(この本の著者)が開設し、Wikipediaによると、現在18人の常勤スタッフのほか、協力するボランティアが多数おり、彼らに情報の収集・分析に使えるツールを提供したり、ワークショップを開いたりしている。欧州連合(EU)などの助成金や個人・法人の寄付で経費を賄っているが、運営は独立・非営利を方針としています。
大手メディアも驚くほどの速さと正確さで次々とスクープを飛ばし、今や世界中から注目される調査報道ユニット『べリングキャット』。シリア政府の戦争犯罪を暴き、ロシアの暗殺者の身元を特定し、ウクライナで民間機を撃墜した黒幕をも突き止める。一体なぜそんなことが可能なのか。彼らが使うのは、SNSの投稿や流失した名簿などの公開された情報のみ。フェイクもプロパガンダも混在するウェブ情報の中から、権力者たちが望まない真実へとたどり着くのだ。・・・裏表紙に書かれている紹介文の抜粋です。
スマートホンが普及して、写真や動画をいつでもどこでも撮れる様になり、クラウド上で誰でも閲覧できるような現実の世界・・・最近は個人情報の観点から、“影”の部分を取り上げられることが多い様ですが、こうした情報を丹念に収集して、コツコツと証拠を積み重ねて、国家の嘘を暴くという“光”の部分に焦点が当たっています。人海戦術と言っていいのかわかりませんが、数多くの人が関心を持ち絶えず目を光らせているならば、いかに権力者といえどなかなか嘘で丸め込むことなどできないのだと思わせてくれます。
もちろんこうした報道の手法も、悪用しようとするものが現れないとは限りませんし、ディープフェイクによって厳密なチェックを逃れてしまうことも考えられます。ベリングキャットが絶対間違わないとも言い切れないと思います。がしかし、イントロダクションにエリオット・ヒギンズは書いている文章は少しだけ勇気と安心を与えてくれるように感じます。〈最近世論では、デジタル時代は建物解体用の鉄球も同然と見なされるようになっている。つまり、ジャーナリズムも礼儀も政治も、全て粉砕していくのというのだ。「ベリングキャット」としては、こういうサイバー悲観論を受け入れるつもりはない。インターネットという驚異には、人類にとって良い影響を与える力がいまもあると思う。ただ、社会を守り、真実を擁護するのは、もう体制側の専売特許ではない。
ぼくたちみんなにその責任がある。つまり、「極秘」情報の取り扱い許可とか、秘密会員のみ閲覧可能とか、そういう話ではないということだ。「べリングキャット」はこれまでになかったもの・・・・ふつうの人のための情報機関なのだ。〉
お盆休みにおすすめの一冊です、ぜひ読んでみてください。