「リズムの生物学」という本を読みました。この本は1994年中公新書より刊行された「いのちとリズム 無限の繰り返しの中で」を改題したものです。著者の柳澤桂子博士は生命科学者、サイエンスライターであり、「脳が考える脳」「遺伝子医療への警鐘」「生命の秘密」など著書が多数あり、NHKスペシャル「驚異の小宇宙 人体III 遺伝子」にも出演されています。地球上のあらゆる生物は、生まれ落ちた瞬間から、太陽の周期や月の満ち欠けなど、天体の動きに同調しながら35億年以上もの間、体内でリズムを奏でてきた。サーカディアンリズム、細胞分裂のリズム、拍動のリズム、脳波のリズムなど生物に潜む〈繰り返し〉を実例として挙げながら、我々は行進に心躍らせ、太鼓の響きに陶酔する本能、リズムの謎を解き明かそうとする内容になっています。著者は心理学者のレヴィンソールの著書「エンドルフィン」から『不確実性を何とかして確実性に変じ、辻褄の合わないことに整合性を与えたとき、脳内のエンドルフィン系がそのような安堵感や、ときには陶酔感をもたらしている可能性は極めて高い。ここにもまた、人類の生物学的遺産とのつながりを見ることができる。もろもろの理念間に関連性を見出そうと追求するのは、人間だけの習性かもしれないが、関連性という理念は、進化の歴史をずっと貫いてきた命題なのだ。人類の発生のずっと初期の段階で、神経系は、場所と関連性、そして人々との関連性を人間が確実に把握するように構築されてきた。そして、脳の進化はこのような点のすべてにおいて、エンドルフィンが機能することの重要性を本書は述べてきたのである」という部分を引用して、このような心理学者の弁を聞くと、私たちの周りに見られる時間的・空間的な繰り返しの間の関連に整合性を感じたとき、私たちは、安堵を覚え、それがエンドルフィンと関連しているのではないかと想像して見たくなると述べていて、さらに私は宇宙の中の時間的・空間的な繰り返し現象について考えていくうちに、私たちが生きていく上での安心感が、繰り返し現象の予測の上に成り立っているのではないかと考えるようになった。自分の予想どうりにものごとが繰り返されることに、私たちは安心感と快感を感じるように進化してきたのではないか。・・・と最終章には書かれています。しかしなぜか予想どうりに繰り返されるリズムだけでなく“1/fゆらぎ”というパワーが周波数f(fは0より大きく、有限な範囲)に反比例するゆらぎが人間の生体にリラクゼーション効果をもたらすとも言われていて、規則正しいリズムとランダムで規則性がないリズムの中間の揺らいだリズムと生物の関連性もいろいろな研究によって示されてきています。・・・・・なかなか奥が深いです。リズムによって生命現象を捉え直すという視点はとても興味深いのでじっくり考えてみたいと思っています。