『気』の話

2022年05月19日 16:48

最近のブログでは、東洋医学関係の話が全くないので本当に鍼灸師か?と疑われそうなので今回は『気』の話です。「科学と神秘のはざまを解く 気のはなし」という本を読みました。あまり同業者の本は読まないのですが、著者の若林理砂さんは鍼灸免許を取得後、早稲田大学第ニ文学部で東洋思想や世界の宗教について学ばれた後、治療室を開院。予約の取れない人気治療室となっているそうです(これがなんとも羨ましい!)。健康関連の著作も多数執筆されています。「気」という文字の起源、孔子・老子・荘子・孟子の考えた「気」、易や風水の「気」、東洋医学の「気」、科学の「気」、日常の「気」、武術の「気」、うつと「気」など多種多彩な怪しげなものから科学の目で見たものまで「気」の世界をそれぞれ解説してくれます。鍼灸を使う治療科として必ず向き合わなければならない、科学の視点でわずかずつ読み解かれているエビデンスベースの治療と、なんだかわからないけれど効く治療のバランスをうまくとって、東洋医学や養生といったものをより深く捉えられるように「気」の話を落とし込んでいるといった感じです。

やはり東洋医学(日本ではほぼ中医学だと思いますが)で成り立っている鍼灸を職業としているものとしては、『気』とは何か?からは逃げられないのだと思います(これを無視して東洋医学は成り立たない)。私も鍼灸師の端くれとして(人気治療院ではありませんが)、『気』ってなんですかと聞かれた時は何かしらの回答をしなければならないと思っています。流れのようなもの、波のようなもの、電気的なもの、遠赤外線的なもの“〜のような“とか“〜的“ばかりですが諸説あります。私はこう思います、『気』とは分布(偏りのようなもの)ではないかと。時間軸で見ればリズム、空間軸で見ればバランスと言っていいかもしれません。イメージで言うとリミット・サイクル振動という現象がありまして、この現象は周期的なリズムを持ち、自己触媒的でしかもフィードバック制御されている系なのですが(話長くなるので詳しい説明は省きます・・ググってください)、こうした現象は神経細胞の刺激伝達、サーカディアンリズムや脳波などでも関係が示唆されています。考えてみれば世の中には周期的なリズムはあらゆるところに出現します。惑星の公転周期、細胞分裂の周期、性周期等。東洋医学を考える時、私はリズムとバランスを常に意識するように心がけています。

記事一覧を見る