生きものたちの「かわいくない」世界

2022年04月01日 08:54

最近、雑誌「ネイチャー」に、2箇所の異なるイギリスの動物園で飼育されている2匹のメスのコモドオオトカゲが、これまでオスに一度も会ったことがないにもかかわらず、健康な卵を産んだという記事が掲載された。このイギリスで生まれたコモドオオトカゲの赤ちゃんは、母親の配偶子が融合することで生まれたため、母親のクーロンではない。つまり赤ちゃんは1匹ずつ遺伝子が異なっているのだ。・・・・・これは今日がエイプリールフールなのでネタを仕込んだわけではありません現実の話です。この話のびっくりするところはその先にあって、ヒトの女性が単為生殖で繁殖できるとしたら、女の赤ちゃんしか産めませんが、コモドオオトカゲの場合、性別に関わる染色体の問題は逆になり、オスは同一の染色体2本(WW)持っていて、メスは異なる染色体を2本(WZ)持っている。イギリスでの例の場合、同一の染色体を持つ卵細胞同士が融合し、WW型またはZZ型の胚を生成したことが確認され、WW型の胚はオスの赤ちゃんにまで発達するが、ZZ型の胚は途中で死んでしまうので、生まれてきた赤ちゃんはすべてオスだったとのこと。メス1匹になっても家族を作り直せるように、自然が工夫しているかのような現象です。

この話は「生きものたちの(かわいくない)世界」ヴィンチェンツォ・ヴェヌート博士著という本の中に書いてあることで(原題はIL GORILLA CE L’HA PICCOLO この方が性と社会という内容に沿っている感じがします)、この本は、生きものたちの知られざる「進化」と「性淘汰」を動物行動学で読み解くポッドキャストの内容を加筆して書籍化したものです。著者のヴィンチェンツォ・ヴェヌート博士は生物学者で、主にオウムのコミュニケーションの研究に取り組んだ後、テレビの世界へ入り、数々のドキュメンタリー番組の司会を務めている方です。夫婦円満の象徴、ツバメ。でも生まれたヒナの30%は実は父親が違う。とか、イルカのオスのグループは、メスを群から孤立させて交尾を強要するなど、結構、衝撃的な内容も盛り込まれています。

この本の最終章にこんな詩が載っています

僕らがここに一時的にしかいられないこと
今日の空が曇っていること
生まれたら必ず死ぬこと
そして物語は終わってしまう
それって何のせい?何のせい?何のせいだ?
すべては君の見方しだい
それって何のせい?何のせいだ?
すべては君の見方しだいさ
               ーハラべ・デ・パロ「Depende」より
生きものたちの世界も人間から見ればいろいろな解釈の仕方があり、それは「君の見方しだいさ」・・・・そう言われているような感じがしました。

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