「独裁者」は1940年公開のチャールズ・チャップリン監督・製作・脚本・主演の映画です。チャールズ・チャップリンは(別名チャーリー・チャップリンとも呼ばれる)イギリス出身の映画俳優、脚本家、映画プロデューサー、作曲家であり、サイレント映画時代に名声を博したコメディアンです。山高帽に大きなドタ靴、ちょび髭にステッキという扮装のキャラクターを通じて世界的な人気者になり、映画史の中で最も重要な人物のひとりと考えられています。「黄金狂時代」「街の灯」「モダンタイムス」など数多くの有名作品を発表しています。チャップリンは後世、自伝において「ホロコーストの存在は当時は知っておらず、もしホロコーストの存在などのナチズムの本質的な恐怖を知っていたら、独裁者の映画は作成できなかったかもしれないと語っています。ヒトラー本人がこの作品を観たかどうかについて明確なことは言えない様ですが、ヒトラーの元秘書の証言によると「ヒトラーは実際にこの映画を観た」とされ、チャップリンはこの証言を聞いて、「なんとしても感想を聞きたいね」と答えたといいます。「独裁者」といえばやはり終盤の演説シーンだと思いますが。この映画は1939年9月にドイツ軍がポーランドに侵攻して始まり、祖国イギリスも参戦した第二次世界大戦勃発後の2週間後から撮影を開始していて、制作中に起こったヨーロッパでの戦争が、賛否両論を生んだ終盤のスピーチを挿入する動機となったそうです。内容はぜひ映画を観ていただきたいのですが、いま現在観てもまったく色褪せていない名シーンだと思います(ただあの名シーンが独裁者のヒンケルではなく、ユダヤ人の床屋が意を決して語りかけるものであるならば、違いを出すために早口で捲し立てるようなトーンではなく、ゆっくりともっと長尺のシーンであっても良かったのではないかと思っています)。貪欲と憎悪の壁は未だ人類は乗り越えられていないのでしょうか?名画を観終わった後はやはり考えさせられることが多いです。
ちなみに公開当時にドイツと同盟関係にあった日本では公開されず、日本初公開は第二次世界大戦の終戦から15年後の1960年だそうです。