ニルマル・プルジャ

2021年12月18日 08:06

ニルマル・プルジャ(通称ニムズ)はネパールの登山家の名前です。Netflix独占配信「ニルマル・プルジャ:不可能を可能にした登山家」を観ました。実話、要するにドキュメンタリーなのですが、冷静に考えると無茶苦茶な話です。プロジェクト・ポッシブルと名付けた挑戦で、8000m級14座の最速登頂記録を2900日(約7年)から189日(約7ヶ月:正確には6ヶ月と6日だったと思います)に短縮してしまった男の記録です。ちなみに今年1月にはK2の冬季登頂を世界で初めて達成しています。

ニムズさんは若い頃にグルカ兵になった後、英国特殊部隊で働いていたが、「境界線を突破する、これが私の仕事。人間のパフォーマンスと努力の限界を突破する、これが私の仕事なんだ」として全てを捨ててプロジェクト・ポッシブルに挑戦します。標高8000mから上の領域はデスゾーンと呼ばれていて、人体は高所順応せず酸素が補充されるよりも早く酸素の蓄えを消費します。8000mを超える山は世界に14座あり、エベレスト、K2、カンチェンジュンガ、ローツェ、マカルー、チョ・オユー、ダウラギリ、マナスル、ナンガ・パルバット、アンナブルナ、ガッシャーブルムⅠ峰、ブロードピーク、ガッシャーブルムⅡ峰、シシャパンマです。

アンナブルナ(8091m)では2011年までの死亡/登頂比が31.9%、K2(8611m)では死亡/登頂比が26.5%と以前と比べると安全にのぼれるようになっていると言ってもかなり厳しい数字だと思います。しかも時間をかけて徐々に行う高地順応なしのスピードアップ。さらに下山途中で遭難している登山家を発見し救助を行う様子なども記録されています。こうしてみると無謀な人間に見えますが本人のインタビュー(Red Bullホームページより)などをみると、決して無謀な人間でないことがわかります。次の目標は何か?と聞かれて「私はその目標をまだ誰にもいうつもりはない。自分でもその目標が怖いと思っているからだ」と答えています。自分の恐怖心を理解してそれが自分を生かしていることを判断できる冷静さ。「そのとき、私は自分はもっとやれると気づいた。そして、もっと大きな目標について考えるようになった。なぜなら、境界を越えなければその先はイメージできないからだ。越えたあと、他のことについて考えられるようになる」境界を設定して一つ一つそれを乗り越えることで次の境界をイメージしていける確実さ。こうした鍛え上げられた心と身体を持っているものこそが偉業を成し遂げられるのだろうと感じました。

ある登山家がインタビューの中で、これほど集中することが強いられる世界にいると、瞑想に入っているような気になると言っていたのは印象的でした。究極に集中することで脳がリラックスして最大限のパフォーマンスを発揮する・・・・・特に低酸素の状態でのパフォーマンスですから条件としては悪条件であることは間違いないと思います。難しい問題です・・・ひょっとすると生命の危険が迫っている悪条件の方がその限界点を突破できるのかもしれません。

8000m級の登山はこれから挑戦するのは難しいと思いますので、優しいなだらかな山でトレッキングなどをやってみるチャンスがあればチャレンジしたいと思っています。

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