「教養としての落語」は落語家の立川談慶師匠が書いた本です。教養としての英語とか教養としての世界史などの表現はよく聞きますが、落語というのは初めて聞いて、面白そうだと思ったので読んでみました。吉田茂元首相や日本資本主義の父である渋沢栄一氏などはかなりの落語マニアだったらしく、人の心をつかむ術のヒントなどを落語から得ていたのではないかと談慶師匠は考えています。本の中で落語を日本の伝統芸能と位置付けて、江戸時代より400年、日本人を笑わせてきた国民共通の笑いが、いかにして誕生して発展してきたかを、いろはの「い」から丁寧に解説してくれます。考えてみれば古典落語は江戸時代から口伝えによって師匠から弟子に代々伝えられて、数百年生き残っているのですから究極の鉄板の笑いと言っても良いと思います。しかも(談慶師匠は古典落語はカバー曲と表現していますが)約300ほどの演目を数多くの落語家さんが演じていて、未だ色褪せずに面白いと言えるのは、世界的にみても特殊で面白いことなのではないかと思います。その他の伝統芸能の、歌舞伎や能・狂言、文楽などとの比較や落語由来の言葉の小ネタなど、なるほどなあと学べる内容にもなっていますのでぜひ読んでみてください。落語は父が買った落語全集のカセットテープを聴いて以来よく聞く方だと思いますが、今だに高座を聴きに行ったことがありません、今ではもう聴きに行くことができないのですが、古今亭志ん生(5代目)師匠や古今亭志ん朝師匠(3代目)、柳家小さん師匠(5代目)などはぜひ生で聴きたかったので残念です。
この本を読んで“古典落語はカバー曲のようなもの”だと聞いて最近ハマっているのが同じ演目の聴き比べです。今ぐらいの季節にぴったりの演目で柳家小さん師匠バージョンと古今亭志ん朝師匠バージョンの「時そば」とか立川談志師匠バージョンと古今亭志ん生師匠バージョンの「芝浜」とかです。・・・・・・・・これはなかなか甲乙付け難いようです・・・当然筋は同じなのですが、枕もアレンジもかなり違っています。聴き比べてみてそこがまた面白いといえば面白いところなのですが。これからの季節「禁酒番屋」とか「初天神」なども面白そうなので聴き比べてみたいと思っています。