以前映画館で「杏っこ」1958年成瀬巳喜男監督、香川京子主演の映画(室生犀星原作)を観てから香川京子さんのファンになりました。1950年代では「東京物語」1953年小津安二郎監督(海外での評価は非常に高いのですが、なぜか主要映画祭での受賞はされていないようです)、「山椒大夫」1954年溝口健二監督(ちなみにヴェネチア国際映画祭銀獅子賞)、1960年代では「天国と地獄」1963年黒澤明監督などの作品に出演されています。今回、“昔観た映画をもう一度観てみよう”として観た映画は「驟雨」(しゅうう)1956年成瀬巳喜男監督です。香川京子さんは新婚の奥様役で冒頭部分に登場しますが、当時25歳・・綺麗ですよ・・・・・これが。映画の内容は、実を言うと原節子さんが主役で、香川京子さんは最初の数分しか登場しないのですが、それだけでも見どころです。成瀬巳喜男監督作品に原節子さんが出演するときは、ごく普通の夫婦の奥様役がパターンで、「驟雨」も倦怠期の夫婦がテーマになっています。サラリーマン夫婦の日常をリアルに丁寧にしかもユーモラスに描いている手腕は、成瀬監督らしさが充分に発揮されています。面白いのは、昭和30年代の小田急梅ヶ丘駅付近の新興住宅街を舞台としており、下町の人情味あふれる町内会とは違った、少し近所同士の繋がりが希薄になった町内会の様子や、今では目ん玉飛び出るくらい高い物件だと思われる、駅近土地付き一戸建ての隣同士の暮らしぶりなどが見られて、今ではだいぶ変わってしまったところと、あまり変わっていないようなところが見受けられて面白く感じました。
原節子さんが台所でお茶漬けを立ったままかき込むシーンは、知っている方も多いのではないかと思います。セリフなども「浮雲」を手がけた水木洋子さんが脚本をされているので。リアルでちょっと面白い会話が楽しめますのでおすすめの作品です。
ちなみに驟雨(しゅうう)とは(英:rain showers)Wikipediaによると、対流性の雲から降る雨のこと。降水強度が急に変化し、降り始めや降りやみが突然で、空間的な雨の分布を見ても変化が大きく散発的であるのが特徴。特に、短期間でやむような一過性の驟雨をにわか雨と言うそうです。