クワイ河収容所

2021年10月22日 08:52

「クワイ河収容所」アーネスト・ゴードン著を読みました。内容は、『スコットランド生まれのイギリス人将校が、第二次大戦中に日本軍の捕虜となる。タイ・クワイ河流域の収容所生活は、不信と憎悪と死臭に満ちた生活だった。アジアを含む膨大な死者を生んだ泰緬鉄道建設の強制労働のための収容所という地獄の中で、奇跡的に捕虜たちは、友愛の精神を通して人間性を取り戻していく。』過酷な捕虜体験を綴ったノンフィクションです。著者のアーネスト・ゴードンさんは戦後アメリカに渡り、ハートフォド神学校に学び、1955年プリンストン大学の教会牧師となっています。
ちなみに映画「戦場にかける橋」デヴィッド・リーン監督(第30回アカデミー賞作品賞)は同じく泰緬鉄道建設に強制的に動員された捕虜の話ですが、原作はフランスの小説家ピエール・ブールの「戦場にかける橋」を原作としていて、ノンフィクションではなく脚色されています。(原作「戦場にかける橋」は残念ながら日本語訳は出ていないようです)
前半の過酷な収容所生活の部分では、日本兵と捕虜との関係性や捕虜同士の関係性も含めて、人間の奥底にある本性のようなものが、現場で実際に観て感じた者を通じて語られ、リアルで重苦しい話が続きます。戦争体験談においてあらゆるところで登場しますが、ここでも日本軍のあからさまの人命軽視の姿勢が明らかにされ、組織全体に隅々まで行き渡っていた根深い問題だったと感じます。後半はキリスト教的は宗教観が全面にわたっているので、日本人からするとちょっと馴染みが少ない感じがしますが、神を信仰することとは・・・ある人が神を信じて心の平安を得て行く、その心理的な過程や原理みたいなものが克明に記されていて、宗教というものをアーネスト・ゴードンさんの心を通じて、こういうものなのかな・・と学ぶ事ができる内容となっています。人間とは、宗教とは、心の平安とは、戦争とは・・・・簡単に答えは出そうにありません。

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