本屋大賞・発掘部門「無理難題が多すぎる」に引き続き今回は土屋教授(ツチヤ師)の最新本「不要不急の男」を読みました。この本は『週刊文春』連載エッセイをまとめたものです。“まえがき”からすでにツチヤ師の鋭い哲学的な言葉が炸裂しているのですが、「本書に何の意味があるのか。そう問う人は自分が生きていることに何の意味があるのかを自問してもらいたい。そして、いかなる情報も提言も提供しないという姿勢のすがすがしさに目を開いてもらいたい。」ツチヤ師のあまりに哲学的で謙虚な姿勢に顎がはずれ・・・・・じゃなかった目から鱗が落ちる思いです。
コロナ禍においてツチヤ師の哲学的洞察力は発揮されコロナ関連のエッセイが今回は多く見られたようです。「品切れマスクの問題」「中高年が危ない」「自粛で変わった」「コロナの今後」等どちらかと言うと“ボケ”よりも“ツッコミ”の切れ味が鋭かったように思います。特に「お前は羊か?」や「その自信で人生、どれだけ失敗してきたか、その歳になれば分かるはずだ」など今後“ツッコミ”の参考にしたいものばかりです(実を言うと自分が言われているようで、今後そうツッコミを入れられないように参考にしたいと思っています)。
ツチヤ師は実際に言葉に出さずとも心の声として哲学的は教えを説いてくれています。ある日マイナンバーカードの更新手続きに区役所で散々待たされた後、なぜわざわざ出向かなくてはならないかを哲学的に洞察された結果、ツチヤ師の心の声に非常に感銘を受けたのであえて引用させていただきたいのですが
「『国に言われている』と言われて納得できるか!掃除をサボったことを妻に責められたとき『国に言われているんだ』と言い訳したらどうなるかわかっているのか。だいたい人の命をなんだと思ってるんだ。こっちは命がけではるばるやってきて来たんだ。更新がなんのためか知らないが、命をかける価値がなかったら承知しないぞ。それに、待った時間をどうしてくれる。老人の1時間はあんたら中年の5時間に相当するんだ。待っている間にコンビニでバイトしたら二千円にはなる。雇ってくれないが。思えば過去色々な所で待たされてきた。待った時間を有効に使っていたら、偉業を成し遂げることだってできた。・・・・・・・・・・・・死んだら弔辞で『この人の生涯は忍耐の一生でした』と偲ばれるに違いないんだ。あんたに怒っても仕方ないから今日はこれくらいで許しておくが、次は暴れるからな・・・こう言い放ったつもりで憤然と席を立った。」
これほど上手い文句の付け方をあまり見たことが・・・・・いやツチヤ師は日頃の一般庶民の不満を代弁して下さっているのだと思います。心の声としてとどめている謙虚なところを見習わなければなりません。
兎に角、肩肘はらず楽しく読むことができるエッセイですので是非読んでみてください。