「人の言葉 機械の言葉 人工知能と話す以前の言語学」は言語学博士であり、言語学や情報科学をテーマに著作活動を行なっている川添愛博士によって執筆された本です。AIが発達しつつある今、AIと普通に会話することができる日は来るのか、そうした時、AIは本当に言葉を理解してコミニュケーションをとっていることになるのか?そもそも「言葉に意味とは何か」ということを私たちは理解しているのだろうか。理論言語学出身の博士が未解決の謎に迫ります。最近はSiriとかGoogleとか音声認識AIと会話することも一般的になってきていますが、この本ではだいたいどういう仕組みで現在のAIが会話しているのかを、おおまかに掴むことのできる入門書になっていて、頭の中のイメージで捉えやすい良い本だと思います。ざっくり“人工知能ってこんな感じなのかな”といった理解を助けてくれます。それぞれの章で挙げられている例が“なるどなあ”と思うものばかりです。第2章 言葉の意味とは何なのかでは、「ものには名前がある」というメタ認知の例としてヘレンケラーさんの例が挙げられていたり。第3章 文法と言語習得に関する謎では、子供は初めて見る物体の名前を教わった時、教わった名前を「その物体と形が似たもの全般を指す普通名詞」(固有名詞ではなく)だと思い込むといった事物カテゴリーバイアスが働くといったことや、第4章 コミュニケーションを可能にするものでは、ダチョウ倶楽部さんの熱湯風呂での定番「絶対に押すなよ」は「押せ」のタイミングだ、など一般向けに非常にわかりやすく書かれています。考えてみればコメディーの台本などは(映画や舞台の台本なども同じだと思いますが)かなり細かく登場人物の人種・性別・地位・職種・癖・考え方等・・・・また登場人物間の人間関係も細かく上下関係や好き嫌い等様々な要素を織り込んで作らないと成立しないでしょうし、それを見る側の共通の理解がなければ成立しない(笑いが起こらない)のでしょうから言葉の意味を理解することは人間であれば普通に行なっていることを、AIがするとなるとそう簡単ではないのだろうと思います。
近い将来、AIとコミュニケーションするできる日は来るのか?本当に共通の認識に基づいて分かり合える日は来るのか?考えさせられました。